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パンデミック
第七十三話「暗闇から見たもの」
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左足と右腕が無い。
感染者に喰われて無くなったかのように欠けていた。
にもかかわらず、そのシルエットは何事もなくじっとブランクを見ている。

「…………あぁ、お前は…………」


顔は見えない。しかしブランクには、目の前にいるのが誰なのか、自分でも驚くほどはっきりと分かっていた。






目の前にいるのは"俺"だ。

"人間じゃない"俺だ。





「俺は……つくづく自分が情けなくなるよ。誰も死なせたくないから"お前"の力に頼ったのに…肝心の俺が使いこなせないなんて…」


―――俺は力が欲しくてコープスに頼ったんだ。力さえあれば、仲間が守れる。どんな奴も殺せる。


「そうだ。俺もそう思って"お前"の力を貸してもらった。でも、今ここに来て、分かったよ」


―――何が?


「俺は仲間を守ることに……敵を殺すことに固執し過ぎた。だから俺は自分の根本をコントロールできなかった」


―――俺は身をもって思い知ったはずだ。コープスは制御できない。


「そう思うか? ……………俺はもう決めたよ」








「ちゃんと"お前"に向き合うよ。ずっと"お前"が大嫌いだったけど、今度は受け入れてやる」






「だから、もう一度俺に力を貸してくれ」









表情も分からない"自分"への自問自答。
自分への問いのはずなのに、返ってくる答えを静かに待つブランク。
人間ではない自分は、未熟な人間である自分にどんな答えを返すのだろう。



























―――今度こそ使いこなせよ
































タガートとクレア、彼らの部隊の兵士たち、そしてヴァルゴとアクエリアスは、ブランクの変化に戸惑いを隠せなかった。
今までの暴走状態が、嘘のように鎮まった。
身体の力が抜けていくと同時に、身体中に広がっていた硬化したコープスが、少しずつ剥がれ始めている。
顔の右半分を覆っていた、鬼の顔のような形状のコープスが剥がれ落ち、ブランクの表情が見えるようになった。

穏やかな顔で目を閉じ、ゆっくり上に顔を向ける。


「スゥー………フゥー………」


深く息を吸い、肺から酸素がなくなるまで吐き出す。
肺の酸素を出し切り、ブランクは静かに目を開ける。

「ブランク? 正気に戻ったのか?」

戸惑いながらも、タガートがブランクに問いかける。


「タガート! クレアを連れて退避しろ!
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