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真田十勇士
巻ノ三十二 会見その四

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「策略が少ない家じゃ」
「戦において、ですな」
「武辺の家であり」
「積極的に攻めてきますが」
「あくまで正攻法ですな」
「そうじゃ、だから城攻めでもな」
 その時もというのだ。
「正攻法で来る」
「だからですな」
「あの様にされましたか」
「あえて」
「左様でしたか」
「そうじゃ、どうした攻め方で来るかわかるとじゃ」
 昌幸の目が光っていた、それはさながら虎が敵を見てその命を賭けた勝負の前に燃えているかの如きだった。
「こちらも対し方が容易じゃ」
「ですか、では」
「戦になれば」
「敵の動きにも合わせ」
 そして、というのだ。
「散々に打ち破ってやろうぞ」
「わかりました、そしてですな」
「徳川家の軍勢を上田より追い出し」
「そして、ですな」
「そのうえで」
「後は政じゃ」
 それの話になるというのだ、戦の後で。
「徳川家と和を結ぶぞ」
「戦の後で」
「そうされますか」
「すぐにもな」
「すぐに、ですか」
「和睦に動きますか」
「そして上杉家ともさらに親しくなる」
 上田の北のこの国のことも話した。
「無論羽柴家共な」
「戦の後で全ての家とですか」
「親しくなりますか」
「そして生き残る」
 この戦国の世においてというのだ。
「わかったな」
「戦だけではない」
 幸村は昌幸の話を受けてだ、瞑目する様になって言った。
「父上がいつも仰っていますな」
「ただ戦に強いだけではじゃ」
「何時か敗れますな」
「孫子に書いておろう、百戦百勝はならぬ」
「戦わずに済めば最善ですな」
「だからじゃ」
 昌幸は幸村に静かだが強い声で話していった。
「戦になったならば勝つがな」
「肝心は戦をせずに済ませることですか」
「そういうことじゃ、だからこの戦の後でな」
「徳川家と和してですか」
「上杉家ともさらに親しくなり」
 そしてというのだ。
「羽柴家ともじゃ」
「どの家とも」
「北条家ともじゃが」
 昌幸はこの家についてはこう言った、見れば顔が僅かにだが微妙なものが入っている。
「しかしあの家はな」
「何かありますな」
「昨日星を見たが」
 今度は信之に話した。
「妙に星の巡りが悪い」
「星の、ですか」
「輝きが徐々に落ちてきておる」
「その輝きが」
「危ういやも知れぬな」
 北条家はというのだ。
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