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鎮守府の床屋
前編
11.祭だ祭だっ!!(後)
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背後から抱きついてくるヤツがいた。この酒臭い匂いは、妖怪飲んだくれ女の隼鷹か!!

「そらちょっと酷いでしょハル〜!! ひゃっひゃっひゃっ!!」

 振り返ると、隼鷹はビールのジョッキ片手にすでに顔マッカッカな状態で少しフラフラしていた。なんだ隼鷹、提督さんの手伝いしなくていいのか?

「そらぁあたしだって艦娘ですから? 愛する男の手伝いをしたい気持ちはあるよ? でもさー……」

 なんだか予想外な反応だな……隼鷹は口を尖らせ、ちょっと残念そうに夜店の方を指さした。そこにいるのは……

「提督! 球磨のわたあめはまだクマ?!」
「待ってろー!! 今作ってる!!」
「司令官! 一人前のレディーは早く焼きそば食べたい!!」
「はいよ任せろー! わたあめ作り終わったらすぐとりかかる! そこのいちごあめ一個食べていいぞー!!」
「やったー! でも一人前のれでぃーはこれぐらいでは待てないわよ!!」
「く、球磨もいちごあめと言わず、りんごあめが欲しいクマ!!」
「わたあめかりんごあめ、どっちかにしろー!!」
「提督?! 私、この“すぱいひぇん・だー・ごるとふぃっし”ってアクティビティをやりたいわ!!」
「おう! 出来るだけたくさんの金魚を掬ってやってくれ!!」

 やっべ……提督さんめちゃくちゃ忙しそう……でも幸せそうだなぁ提督さん。心底楽しそうだ。

「あんな楽しそうな顔されちゃあねぇ。邪魔出来ないよねぇ」

 と妙に殊勝なことを言う隼鷹の横顔は、なんだかちょっと色っぽく見えた。

 提督さんはきっと、元々あまり戦いを好まない性格なのだろう。確かに執務室や仕事中に見せている顔は軍人の表情をしているが、俺には、今楽しそうに艦娘に振り回されてる提督さんの方が、本質に近い気がした。

 そして、そんな提督さんのがんばりを眺める隼鷹の顔も、口を尖らせながらもどこかうれしそうだった。きっとこの隼鷹も、軍人としての凛々しい提督さんよりも、こういう平和の中で生き生きと動き回る提督さんを見て、惹かれていったんだろう。

「提督さ。ハルにすごく感謝してるみたいだよ?」
「お? なんだ突然?」
「ハルも聞いてると思うけど、この鎮守府ってもうボロボロでしょ? 少ない資金をやりくりして、私達のために司令部にひたすら頭下げて、やっと慰安施設として美容院を準備できるってなって……でも1回ダメになっちゃって……だから今回不安だったらしいんだよね。『来ても、みんなと仲良くやってくれるのか』とか、『また前みたいにダメになったりしないだろうか』とか、ハルが来る前はよく言ってたよ」

 そっか。だから俺が初めてここに来た時や無事店を開いた時、あんなに嬉しそうにしてたのか……。

「そしたらハルが来てくれて、みんなに馴染むどころかこんな
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