Side Story
少女怪盗と仮面の神父 3
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固く閉じた目蓋を、にっこり微笑んで誤魔化した。
「はい。差し出がましいのは承知の上でお尋ねします。貴女は今、並ならぬ大きな悩みを抱えていらっしゃるのではありませんか?」
「…………は?」
「ご気分を害してしまったなら、どうかお赦しください。先ほど祈っていた後ろ姿があまりにも懸命だったので、気になってしまったのです」
あの、放熱感が凄まじい人集りの中心から。
何故かわざわざ、ミートリッテの様子を見ていた、と言う神父。
不審者扱いではなかったと安心する一方で。
予想外の言葉に驚き、思わず目を瞬かせてしまう。
確かに祈るふりはしていたが、言うほど懸命に見せたつもりはないのに。
「女神アリアに仕える者としても人間としても、まだまだ未熟な私ですが、よろしければ相談してくださいませんか? 身近な間柄ではないからこそ、何かのお役に立てるかも知れません」
「あ……えっ、と……」
ミートリッテは困った顔で視線を落とした。
仕事熱心なのは大変結構だが。
その矛先を、よりによって自分に向けるのは、是非ともやめてほしい。
『悩みは確かにあります。原因の半分は女性受けしすぎな貴方の容姿です。貴方が昨日着任しなければ、女性の群れに恐れをなした海賊が怪盗に盗みを強要するという、ちゃらんぽらんな事態には陥ってなかったでしょう』
などと、言えるわけがないのだから。
「すみません……。お心遣いはありがたいのですが、神父様にお話しできる内容ではありませんので」
ぺこりと頭を下げると、神父は軽く首を傾げ。
透明感に満ちた輝かしい笑顔を、ミートリッテの両目に刻みつけた。
「そうですか……分かりました。ですが、私達はいつでも貴女方を影ながら見守っています。困った時は、遠慮せずに頼ってくださいね。微力ながら、解決へ向けたお手伝いを約束致します」
眩しい。
厚意が目に痛い。
背後に充満する黒い霧や、彼の領域を荒らすことへの罪悪感がなければ、ステンドグラスが魅力を引き立てる、女神像にも劣らない芸術的な画だと、のんきに観賞していただろう。
「……ありがとう、ございます」
(私の死因は、女衆からの一方的な嫉妬……か。短く儚い人生だったけど、まあ、悪くはなかったよ。うん)
ミートリッテは、なんかもう、いろいろと諦めた。
引き攣った笑顔で、もう一度神父に頭を下げ。
速やかに退室しようとして
「あ。それと、もう一つ」
またしても神父に呼び止められた。
これ以上、縮められる寿命は持ち合わせてないのだが。
「私は、先日よりこのネアウィック村の教会での勤めを任されている神父、アーレストと申します。貴女のお名前を伺ってもよろしいでしょうか」
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