寄り添う蓮の白さに
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本当は逆だった。本来は逆だった。
桃香のそういった所に白蓮は憧れていたはずで。
その差異に、その変化に、愛紗は気付いてしまった。
だから、星のことが羨ましい。昔の桃香のような白蓮と並んで歩いている彼女が。絶対の忠臣、白馬の王の右腕である彼女のことが。
一人。朱里は星の声と愛紗の無言からその心情を察する。“全てを理解した上で”
――そう、だから私は桃香様を此処に呼ばなかった。
白蓮と同じ状況に置かれた西涼の使者に対して、今の心乱された桃香では有利が得られないと思ったから。
目の前に現れた西涼の使者に冷たい現実を突き付ければ、きっと白蓮は今のような行動に及ぶと分かっていたのだ。
白蓮が優しく導けば、それは桃香の意思でもあると手渡せる。
これで西涼の心は手に入れたも同然。心の底から来る優しさの発露は、甘い毒のように西涼の民に沁み渡って行くだろう。
僅かな支援でいい。ほんの僅かな手助けをするだけで、西涼の勝敗如何に関わらずその兵力が手に入る。
ここまでが朱里の計算。
隣に立つ藍々は、そんな朱里の思考を読み取って震えあがる。
――人の心さえ遥か高みから見下ろしながら操る……なんてバケモンになったんスか、あんたは。
耐える。
口に出すことなく、藍々は目の前の白蓮と蒲公英に向けて呆れたように見せながら声を上げた。
「……白蓮さんの意見もごもっとも、全兵力を向けることは出来ないッスけど……始めっから自分らは西涼に支援を申し出るつもりでした。
長旅でお疲れでしょうし、今日はこれまでとするッスよ。ゆっくり旅の疲れを取ってください。馬岱さん……と……?」
そういえば、と思いだした。一緒に来ていた男は何物なのだろうか、と。
微笑ましげに蒲公英を見ていた男が、藍々の発言によって漸く口を開いた。
「ああ、名乗るのが遅れたな。俺は華佗という。ただのこの子の護衛兼付添いで、医者だ」
その発言に目を見開いたのは、たった一人。
雷光の如く思考を巡らせた後、慄く唇を震わせ、彼女は……朱里は声を流した。
「……そう、ですか。長旅お疲れ様です。すぐに部屋を準備させるので、使者の方と共にゆっくりとお休みください」
“彼”に対する、深く色付く悲哀の感情を溢れさせながら。
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