寄り添う蓮の白さに
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本来なら目の前で言うような話ではないのに、藍々に平然と言い切られては絶句するより他ない。
「まずウチらの現状も説明しますよ?
現状の劉備軍が動かせる総兵力が四万ッス。益州の牧ではないので徴兵することも出来ないため、益州以外の人間しか使えないってことッスね」
「民に呼びかけても他の地域のことで立ち上がってくれることはありません。自分達が暮らす土地を守る為ではない戦いに身を投じるほど、人々の心は義憤に溢れてはいませんから」
対岸の火事に首を突っ込みたがるモノは居ない。朱里はそう語る。
元より西涼の救援願いこそがわがままである。自分達の命が危ういから助けてくれと願っていいのは、古くから慣れ親しんできた友や家族、はたまた同じ志を共にする同志くらいであろう。
馬騰の狙いが何であるのかを朱里も藍々も読み切っている。
いつかは曹操と敵になるのだから手を組んで相対するのは悪い話では無いのは確か。しかし今回は……あまりに時機が悪すぎた。
これが攻められる前であれば少しは話が違う。董卓のように、袁家のように悪逆を行う勢力を討伐しようというなら分かる。しかし救われたいが為の命乞いに想えるタイミングでは、人の心は動かせない。
「じゃあ劉備軍は……どうして孫策軍を助けに行ったの?」
ある程度頭の回る蒲公英からはそんな質問が飛んだ。あちらは助けてこちらは助けないのか、そんな意味合いを持つ質問が。
救う命を取捨選択する行いに人は疑問を持つ。無償で誰かを助けるモノがいるのなら、助けて欲しいモノはソレに縋るモノだ。蒲公英が放った疑問は当然に出てくるモノであろう。
それに対して朱里は、冷たい輝きを光らせながら凍りつくような言葉の刃を投げかけた。
「……将来性がある勢力でしたからね。今後の曹操軍と相対するに当たって手を組む為に貸しを押し付けに行ったんです。あなたもある程度政治を見てきたなら分かると思いますが、単純に救う為に行ったわけではありません。
“困った人を助けるのは当たり前”……それが通用するのは国の守護を責としないモノだけですよ、馬岱さん」
主の意向とは全く違う言論を述べる朱里に、愛紗が目に見えて苦い顔を浮かべた。反論を上げることはしないが。
桃香ならばきっと、それは違う、と言うだろう。
桃香ならば絶対に、困った人を助けるのは当然だ、と言うだろう。
しかし朱里は言わない。朱里だけは絶対にソレを口にしない。
主に変わって冷たい決断を下さなければならないこの小さな軍師だけは、劉備軍の中で誰よりも冷たくならなければならないのだから。
「そんな……そんなの……やっぱり、ダメなの? たんぽぽ達は……ずっと、ずっと守ってきたのに……誰も味方になってなんて、くれないの……?」
ただ、やはりと言
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