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乱世の確率事象改変
寄り添う蓮の白さに
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は、はい。
 曹操軍……いえ、魏より宣戦布告が齎され、我が西涼としても戦の準備は進めておりますが兵力差は甚大。
 侵攻開始を目撃した早馬からの情報によると彼奴の軍勢は二十万を下らないと」
「バカなっ! 二十万だと!? 何処からそんな兵数を」

 驚くのも無理は無い。ほんの数か月前まで袁紹軍と大々的な戦を行っていたのだ。いくら広大な領地を整えたとて、それだけの兵数を集めるにはあらゆる事柄が不足しすぎているのだ……常識的に考えれば。
 ただ一人、朱里だけは驚かない。当然のことだと受け止めていた。

「徐州と青州、中原領内の全てを集めて来ていますね。それに曹操さんの領内では自主的に志願する兵士が集う傾向にあります。
 有事は兵士として、普段は農夫として過ごさせるような政策を昔から組み込んでいましたし、黄巾時に青州で賊徒をそっくりそのまま引き入れたとも聞きました。
 それに官渡の戦いで用いた総兵力は四万弱程度なんです。圧倒的不利な兵数差で勝利したのでその余剰分を全て使えば……有り得ない数ではありません」

 淡々と説明する朱里を見て、声を上げた愛紗はそれが事実なのだと受け止める。

――二十万はあまりに多い数。益州への同時攻撃の危機感を煽る目的も含んでる。これで念のための防衛を理由にして私達を成都から引き離す事が出来るはず。

 続けて、と蒲公英に微笑みかけた朱里は、湯飲みを傾けてお茶を一口飲んだ。

「さすがに二十万ともなれば我ら西涼連合全ての兵力を結集しても抗いようがありません。外敵への防衛に当てている兵士を集めても……多分、十万にも届かない、です」
「兵力差は単純に二倍以上。確かにそれでは、いくら歴戦の勇士である西涼の騎馬部隊であっても外部からの助力なくして守り切ることは出来ないでしょうね」
「西涼の主戦力は騎馬ッス。数の差を耐えきれる攻城戦には向いてない。元々が遊牧の民が多いため城の数もそれほど多くなく、遠征の弱点の食糧枯渇を狙うにしても土地柄的に守る方にも不安があるッスか」
「いえ、曹操軍は袁紹軍との戦で試作兵器をいくつか運用してました。なので今回はより改良された兵器も持ち込んでくるでしょう。それを使われては……防城戦に慣れていない軍はとても持ちません」

 すらすらと並べ立てられる説明の前に、蒲公英は呆気に取られていた。
 まるで今ここで軍議が開かれたような空気。納得するしかない理論。反論は許されず、一つ一つを頭に取り込むことしか出来ない。

 藍々が鋭く目を光らせて朱里に続ける。

「でもどうするッスか? 藁にもすがる思いで来た西涼の使者さんには悪いッスけど……ウチらが加わった程度で相手取れるような敵じゃないッス」
「そんなっ……」

 思わず声を上げた。救援を加えても敗北は確定なのだと。

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