暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
プロローグ1 高町 なのは
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としても、私は叫び続ける。

「はぁ……はぁ……っ!」

 一体、どれだけ叫んだんだろう。

 喉は痛くて、息も上がってる。

 声の出しすぎて頭がぼーっとして、立っているのも辛くなる。

 いっそ倒れてしまえば楽なのに、私は強がって立ち続けようとした。

 この強がりだって意味がないことなのに、それでも私は倒れたくなかった。

 だけど、

「ぁ―――」

 だけど疲れ過ぎたのか、限界を迎えていたのか、私は遂に後ろに倒れ――――、

「――――っと、大丈夫か?」

「え……?」

 倒れかけた私を、優しく抱きとめてくれた男の子。

 心配そうな表情で、しかし動揺や不安を感じさせない落ち着いた優しい声で、彼は聞いてくれた。

「具合が悪いなら、家まで送ろうか?」

「……」

 なぜか、言葉が見つからなかった。

 声を発しようとしたら、なぜか息を飲んでしまった。

 出そうとしたものを、なぜか飲み込んだ。

 なぜだろう。

 声を出したら、この瞬間が終わってしまう。

 それを、嫌だと思った。

 銀の髪に黒い瞳。

 整った顔立ちの彼に、なぜか私は釘付けになっていた。

 抱きとめられている体勢が恥ずかしいのに。

 今すぐにでも顔をそらしたいのに。

 なぜか身体は言うことを効かなくて、彼の瞳から目を逸らせなかった。

 彼の――――寂しそうな瞳を。

「……えっと……?」

「あ、ご、ごめんなさい!」

 どうしたのだろう? と言わんばかりに首をかしげる彼に、私はようやく我れを取り戻した。

 慌てて飛び退き、彼に深く頭を下げる。

「あと、助けてくれてありがとうございます!」

「ああ、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です!」

 動揺が消えなくて、声が上擦る。

 それもまた恥ずかしくて、私は視線を落としてしまう。

 上下白の制服に、茶色のカバン。

 黒いシューズを履いている姿を見て、ふと思う。

 彼のその制服には、見覚えが……と言うよりも、今の私と同じ服装だった。

「あの、もしかして私と同じ学園の人ですか?」

 少し落ち着いた声でそう聞くと、彼は多分ね、と曖昧な笑みを浮かべながら答える。

「俺、丁度さっき転入手続きしてきたばかりなんだ。 だから正式に生徒になるのは明日だ」

 そう言われて納得したことがある。

 彼の制服は新品だった。

 改めてよく見れば、洗濯をした時のような毛玉の跡すら残らず、折れ目やシワも一つとして見当たらない。

 春休みが終わってしばらく立つからクリーニング屋さんに出すわけもないし、変だなー程度に思っていた。

 それが
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