竜の見る泡沫
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べないような親愛の笑み。
「くくっ、然り……どうしようもない男ですからな、秋斗殿は」
「だろ? 生きてくれ、なんて他人に言う癖に自分は進んで死ににいく。自分の命に価値なんてないと思ってそうだもんな」
「そ、そうなの?」
「自分が幸せになりたいからとか、家の繁栄の為とか、そういうのはよくあると思う。けどあいつの場合は逆なんだ。自分が死んでも誰かが幸せならそれでいい、個人の生存なんてもんは二の次三の次で、生きたいって気持ちが極端に薄い」
「まったく骨が折れる。まあ、部下や仲間、皆から慕われていてもお構いなしに己の道を行く彼と関わってしまったのが運の尽き。精々出来ることと言えば私達の願いの中で彼に別の願いを叶えて貰うことくらい。そうなった時にこそ、曹操とは離れて幽州でゆっくりと暮らして頂こう」
挑戦的な眼差しで詠を見やる星が言うのは華琳と同じ理論。
欲しいモノは力付くで奪い取る。白蓮と星が欲しいモノは過去の時間で、彼の居る時間。この乱世が終わったらまた優しく甘い時間を過ごしたい、ただそれだけ。
「……相変わらず甘いのね、公孫賛。あいつはコロシアイになったら容赦なんかしないわよ」
「ふふ、私は甘くていいんだ。友達の目を覚まさせるのに命のやり取りは必要ない。あいつが殺すつもりでも、私達は殺すつもりはないよ」
甘さなんかいらないと、嘗ては望んだことがあった。
切り捨てて切り捨てて、そうしないと何も守れないと思った。しかし甘さを捨ててしまうと自分の後ろを着いて来ていた“彼女”が好いてくれた自分ではなくなってしまう。それを教えてくれたのも彼。
「ふーん……あいつに殺されたあんたの部下達とか、その家族はどう思うでしょうね?」
「これは私のわがままだ。でも私の大切なバカ達はこんなわがままに付き合ってくれて、命を賭けてくれる。贖罪……って言い方は卑怯になるけど、あいつと一緒に失われる命の分まで働くことで償うさ」
似たような言い分を詠は知っている。彼や華琳が語る論理とほぼ同じ。自身の行動への対価と、自身の責任への対処。
我を通した後まで見越して白蓮は考えている。それを理解して、詠は大きな……大きなため息を吐いた。
「はぁ……分かった。北の英雄、白馬の王が帰って来てくれるならこれほど心強いモノは無かったんだけど、意思は固そうね。
じゃあ幽州の民にもそう伝えて置いてあげる」
眼鏡のつるを持ち上げ、理知的な瞳に光が輝く。
「ああそれと……もう二度と、幽州を守る兵士はこの乱世の舞台には乗らないから。
内応や増援は期待しないことよ。いくらあんたが呼んでも幽州に居る白馬義従は動かない。あんたが幽州に帰らない限りね」
「……どっちみちさ、私は裏切りが出来ないんだよ。曹操の元に降って桃香と戦うなんて出来
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