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鎮守府の床屋
前編
9.季節外れの恐怖
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ないでくれ」
「パァァアアア……分かったわ! この私が手をつないであげてもいいわよ!!」

 普段は化け物と戦っていても、こういう部分は女の子なんだなぁ……と俺がビス子と手をつなごうとしたその時……

「クマッ!!」

 突然球磨が俺の頭をバチコーンと張り倒しやがった。

「いって! 何するんだこの妖怪張り倒し女ッ!!」
「なんかムカついたクマッ!!」
「お前の機嫌なぞ知るか!」
「大体ハルは球磨をおんぶしてるから、ビス子とは手を繋げられないクマッ!!」
「だったら降りろよこの妖怪おぶさり女!!」
「球磨は索敵に忙しいから降りられないクマッ!!」
「アホ抜かせ!!」
「ちょっとみんなみんな!!」

 俺が球磨と不毛なバトルを続けていると、急に川内に呼び止められたので、川内の方を見ようとそっちに目をやった途端……

「うおッ?!!」
「眩しいクマッ?!!」
「なにこれッ?!! 妖怪なの?!! 妖怪が出たのッ?!!」

 恐るべき眩しさが俺達三人を襲った。今まで暗闇の中にいたため瞳孔が開きっぱなしの俺達にはこの光の襲撃は強烈すぎる……目を細めてよく見ると、川内の太ももあたりが眩しく光っている。川内の顔は、そのライトの眩しさに負けないぐらいの眩しい笑顔だ。でもその眩しい笑顔が今は最高にムカつく。

「なにやってんだ川内!!」
「暗くて見えづらいからさ。探照灯つけてみたんだー。これで夜戦も大丈夫でしょ? ニヒンッ」
「そういうのは切り札にとっとけって! 今は懐中電灯で充分だッ!!」
「ちぇ〜……せっかく夜戦に備えて持ってきたのに……」

 口をとがらせ、へそを曲げた川内がぶつくさいいながら自身のふとももに手を伸ばし、探照灯のスイッチを切った。だいたいなんてところに装着してるんだお前は。スカートいつも短いなぁと思ってたら、それが理由か! 手に持つとかしろよそんなきわどいところじゃなくて。

「クマッ!!」

 おんぶしているために避けようのない俺の頭を、球磨が再度張り倒してきた。だから痛いって言ってんだろ!!

「なんかムカつくクマッ!!」
「わけわかんねえ!! わけわかんねえよ!!」
「は、ハルぅ〜……」
「今度は何だビス子?!」
「こ、こわがっだらぁ〜……わだ、わだじが〜……手をづないであげでも……いいのよ〜〜……ぬらりひょんがぁ〜……べとべとさんがぁ〜……」

 なんだこの惨状は?! お前ら本当に軍人なのか?! これ本当に軍の任務なのか?! 俺からしてみれば、どうみても中学生の時の林間学校の肝試しにしか思えないぞ?!

「分かった! しがみつけ!! 怖いから! 俺怖いから!!」
「パァァアアアア……し、仕方ないわね! この私がしがみついてあげるわ!!」
「ムカつくクマッ
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