第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
3話 剣の櫃堂
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たものの、何とか平静を装いつつ距離を置く。よもや落ちた腕を武器として用いるなど石像の青天井な豪快さには恐怖を覚えてしまいそうになるが、ある意味で特殊攻撃と見れば得心がいく。ただし、それが有効に働くかはまた別の話になる。
そして続く二撃目。やはり大振りの袈裟に振るわれた剣の軌道から避け、鈍い刃の上に飛び乗る。
石畳に叩きつけられて舞い上がった砂埃の向こうで、《破壊不能オブジェクト》を報せる紫のウインドウが光を放つのを横目に見つつも、刃を走り抜け、右腕を越え、左の手首を踏み抜いて跳躍する。着地点は石像の肩。しっかりと幅もあり足場として不便はないが、それでも借りるのは僅かな時間だ。
落下の加速度を余すことなく乗せた拳は石像の脳天を捉え、ビキリと不穏な音をたてる。体術スキル防御貫通技《鉄穿》。軒並み低火力な体術スキルにおいて異色の効果を持つこの技は、鎧紬一触という四字熟語を字面だけ体現したような働きを見せる。加えて、体術スキルはその大多数を打撃属性に占められている。更に言うならば、打撃属性に該当する攻撃は《堅固な外表を持つ》相手に対しての有効打となる傾向がある。どうやら読みは当たったらしく、敵の守りを貫く拳は石像のHPを三割ほど削り、頭部に薄い皹を走らせる。これで弱点属性も把握できた。片手槌使いであれば素早く決着をつけられるのであろうが、今の俺に与えられた決定打は拳と脚のみ。
肩から飛び退いた先で愛剣を剣帯ごと横へ抛り、石畳を駆けて再び接敵。横薙ぎを屈んで回避し、石像の踏み込んだ右足に水平蹴り技《水月》を放ち、足を払う。ゆっくりと後方に倒れるタイミングを見逃さず、硬質な石材の膝を足場に跳躍。体術スキル《烈震》による跳び膝蹴りが石像の顎を捉え、更に頭部の皹を濃くするのを見届けて着地。ついでに確認した石像のHPは残り三割。そろそろ幕引きとしよう。
「……その首、貰い受ける」
勝利を確信して変な台詞が出てしまうのも気にすることなく、起き上がろうとする石像の首を目掛けて繰り出したのは体術スキル単発技《紫電》と銘打たれた後ろ回し蹴り。遠心力の加わった踵は石像のこめかみを撃ち、HPを更に二割削る。いよいよ頭部に蓄積したダメージで立ち上がれなくなり、ちょうど頭を垂れる格好になった石像の崩壊寸前の頭蓋に体術スキル単発技《霹靂》の踵落としを追撃とする。集中して狙われたことで、いよいよ耐久値が臨界に達した首が砕け、同時にHPも全て失せたことで石像の門番は巨大な剣を遺して青い破片となって宙に融けていった。
「ホントに一人で勝てたのね。剣士っぽくなかったけど……」
「柔軟性があると言ってくれると有り難い。さて、見事に剣だけ残ったわけだが」
「やっぱり、あれ
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