暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章始節 奇縁のプレリュード  2023/11
3話 剣の櫃堂
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
しいところがある。加えて、タダで情報を融通してもらっている以上は《商品として使える情報》を手渡すことで帳尻を合わせなければならない。更に言えばAGI特化のアルゴには荷が重い。
 装備の補修や強化を依頼するお針子プレイヤーズは、残念ながら見送りとさせて頂こう。
 
 こうして消去法を繰り返した結果として、俺のフレンド欄から選択肢は潰えたわけだ。実に情けない。


「もしかしたら、もっと別の場所にヒントがあったりするのかしら」
「それはないと思うぞ」


 グリセルダさんの意見をあっさり否定してみせたが、それはこれまでの経験が根拠としてあるからだ。一応は幾重にも張られたフラグによって守られた隠しクエストや隠しダンジョンではあるが、それへ至るまでの道筋は決して理不尽なものではない。NPCの情報は基本的に信用に足るものしかない上に、あまり奇を(てら)うような難問は無かったといっていい。命の危険に晒されていながら、こう評価するのは倒錯したものを感じるが、このゲームはプレイヤーに対して公平性を損ねないような創意工夫が見られる。やはり、このゲームの製作者は単純にプレイヤーの死に様を見て愉悦を覚える性格ではないらしい。


「じゃあ、他に何か目星でもあるの?」
「そんな簡単に見つかったら苦労はしない」


 そもそも誰も勘付いていないクエストだ。急いだところで結果は何に影響するでもないし、普段であれば気になるものでもないのだが、普段の単独による探索でないこともあってか、思うように進まない現状に多少なりともフラストレーションの蓄積を感じるように思える。話し相手がいることで退屈こそしないが、攻略の速度が気に掛かるようになるというのも思わぬ弊害だ。ともあれ、解決できる問題でもなく、体術スキル込みの拳を石像の脛に叩き込む。まるで溜まったストレスがそのまま重量となって負荷したような、そんな印象さえ覚えるほどの会心の正拳は、それでも僅かに表面を剥離させる程度に留まる。


「………もう、少しは落ち着いたら? 八つ当たりは感心しないわよ?」


 グリセルダさんの注意を受けつつも、拳に意識が向いてしまう為に返答もしないまま放置する格好となってしまう。剥離、僅かな破壊の痕跡はつまり、それが非破壊オブジェクトではないということを指す。それはつまり………

 繰り出した拳打。それ自体が実は思いも寄らぬ《曲解》となっていた事に遅蒔きながら気付く頃には、既に事態は展開していたのである。


「く、っそ!?」


 判断などそっちのけで後方へ飛び退くと、その場に真一文字の剣閃が滑らかに刻まれる。
 数歩更に距離を取り、睨んだ先に()()()のは俺が弁慶の泣き所に拳を食らわせた石像。完全に直立し、岩の巨大剣を握った
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ