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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十話 宴の始末は模糊として
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められれば皇龍道に合流させる予定でしたが最悪でも内王道から支援を受けて後退できます」

「駒州も余裕があるわけでない、東沿道も葦川の水軍による砲艦頼りでは長く持たん
それに事実として現状では皇龍道の防衛がおぼつかないのも事実だ」

「はい、問題は運用案以前のもの、戦力の動員についてです――戦力が不足している、結局はそれに尽きるわけです」

 駒州出身の参謀達が次々と沈黙してゆく。流石にこれは見過ごせない。 
 ――痛いところを突いてくれる。
 豊守は隣の議長席に座る窪岡に囁いた。
「豊地大佐は護州の出身でしたな」

「護州は近衛にやらせたがっているのだろうよ」

「御育預殿――新城少佐ですか、最大の兵数を保有しているのだから道理ではある、あぁこれは性質が悪い」
 豊守は溜息をついた。今の新城は駒城だけではなく親王もついている。守原家であっても下手に手出しはできない。だが捨ておけば武勲をもって近衛に対する駒城の影響力を強めていく、それはほかの五将家の誰もが忌む事だ――やり過ぎれば駒城にとっても。


「そこで――六芒郭を利用する方策を具申いたします」

「六芒郭だと?あの未完成の?」
 窪岡が目を見張った。

「未完成であろうとも要塞です、物資も一時的に拠点として利用する可能性があった為、させていました為問題はありません」

「警備についている駐留部隊は一千名程度、近衛総軍後衛戦闘隊の抱える兵力は八千を超えていると報告を受けております。
九千の兵が後方を扼することができるとわかっている以上、悪くても一個師団――敵兵力の半数の吸引は見込めます」
 そして重火力を展開するのならば皇龍道の攻勢に出ても苦しい状況となる。〈帝国〉軍の輸送力に限度があるのは分かっている事である。

「六芒郭が陥落しない見込みはあるのか、数があっても敗残兵の集成部隊でしかない。指揮統制が効かないようでは防衛に耐えられる可能性は低いだろう。
ならば最初から皇龍道防衛に充てるべきだ。後衛戦闘隊に組み込まれた九千の兵を再編すれば防衛線構築ができる」

「はい、閣下。ですがそうなりますと現在の後衛戦闘隊を再配置しても二個師団を正面から相手をしなければなりません。
雨季まで虎城防衛線をより強固にする事は無理ではありません、龍州軍の回復と護州軍の動員、近衛総軍の新編部隊の投入が完了すれば雨期の突破を断念させうる程度にはなりましょう」

「‥‥‥」
 
 駒城の方針は敵戦力を皇龍道に集中させ、内王道から後方を扼す状況に持ち込み、雨期まで戦線を膠着させる、という物だ。雨期に入ると防衛陣地を突破するための火力が機能不全となる、そうなれば最早、まともな将なら動くことはない。冬季に入ればなおさらだ。虎城も龍州も豪雪地帯である。戦力が足りな
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