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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十話 宴の始末は模糊として
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、と誓ったはずだが――豊守は痛む脚をさすりながら自身の驕慢な思考を嗤った。

 ――何を愚かな事をそも〈帝国〉相手に戦争を行っている時点で破綻そのものではないか

「如何なさった理事官閣下」
 議長席に座す窪岡戦務課長が小声で問いかけた。
「申し訳ありませんな、戦務課長閣下。昔のことを少々‥‥」
 豊守は答えながらも眼前の様相に意識を再集中させた。
 ここは軍監本部の会議室、豊守は兵部省の代表者として赴いている。場所こそ陸軍軍監本部で行われているが形式的には〈皇国〉総本営として行われている、陸水軍の軍政を統括する兵部大臣も〈大元帥〉陛下の幕僚として総本営に参画しているのである。

 そしてこの会議も情勢報告からこれからどうすべきかへと焦点が移っていた。

「虎城の防衛線を構築するには何があろうとも皇龍道の戦力増強、陣地作成が必要だ、その進捗が遅れているのはなんとかならぬか」

「疎開の連中が皇龍道を使っている以上はやむをえまいよ、動員も後方との距離がある以上は駒州のようには難しい」
 兵站課の原坂中佐が腕を組んでいった。
「だが龍口湾にて再編を行っている本隊との合流時期を考えるのならば何かしらの方策が必要なのは確かだ、第二・第三軍のうち駒州に戻すもの以外は一時、護州軍の指揮下に入ってもらう」

「内王道と皇龍道の防衛は最低限でいい、〈帝国〉軍が皇都を制圧しようとするのなら皇龍道を使うしかないのだ!ならばそこに戦力を終結させれば――」
 按田中佐が威勢の良い口調で言ったが駒城派の参謀が即座に鋭く反論を飛ばす。
「馬鹿を言うな!東沿道も内王道も主攻路になりえぬのは防衛に適した要衝であるからだ!逆にそこを奪われたら皇龍道の後方を確保するために余計に戦力が――」

「最悪の場合は皇都を放棄し、守瀬山脈と羽鳥湖を盾に後退し、総反攻を検討しても良いのではないだろうか?」

「極論にすぎる!そのような案を実行しようものなら――」

 そもそも議論の前提が噛み合っていない点は致命傷ではあるが豊守が判断する限りではどの案も外交情勢、国家の統制、臣民達の意識を考えない純軍事的地点から見れば明らかな誤謬を犯しているものはない。
 だが問題はどのような策も現実に即しているかと言えば疑問符がついてしまう、なにしろ――

「護州軍も背州も後備軍の動員にはまだ時間がかかる、後備兵の練兵に時間がかかっている事と距離の問題がある。とりわけ背州軍については第二軍が打撃を受けたことで動員数を増やさねばならなりません」
 戦務課の中でもとりわけ鋭い目つきをした大佐が弁舌を振るっている。
「駒州軍の進捗は連絡線が短いこともあり順調そのものです、第三軍、および第二軍の残余も予定通り蔵原に集結させ、各隊の再編を行います。後衛戦闘が上手く食い止
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