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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十話 宴の始末は模糊として
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皇紀五百六十八年 七月二十六日 午後第三刻 陸軍軍監本部 第二会議室 内地防衛連絡会議
兵部大臣官房 総務課理事官 馬堂豊守准将


 蒸し暑い、既に真夏の熱気が皇都を覆いつくしている。毎年の事であるが今年はその暑気を上塗りする可能に冷ややかな緊張感がこの皇都軍監本部の会議室に漂っている。龍口湾の敗戦より定まらぬままの方針に業を煮やした安東兵部大臣は『軍監本部との統一見解を確認し、円滑な国防政策の施行を行う』という名目でこの内地防衛連絡会議の開催にこぎつけたのである。
 軍監本部の参謀達の大半は無理やり引き釣り出されたようなものであったし、兵部省は兵部省で政策や動員計画どころか予算案にすら支障をきたしかねない現状に苛立っており、軍監本部は軍監本部で一向にまとまらない方針に、総長が指導力を発揮しないことで兵部省が乗り込んでくると己の面子が潰されかねないと、衝突寸前であった。

「情報課から報告させていただこう、現在追撃に出ている部隊はすべて〈帝国〉本領軍、総数は十万を超えている、龍口湾で補充と再編を行っている本隊が合流すれば二十五万を大きく超えたものとなることが予想されている。
敵の兵站状況についてだが保護条項に合致せぬ小村落に対し、事前から疎開の周知を徹底させていたため、大規模な買い付けや糧秣の提供はこちらの残置諜者からも確認している、補給状況は徐々に悪化している事は確実だ」
 そういったのは情報課の瀬津少佐だ。背州の出身であるが堂賀も閨閥意識こそあるが任せるに足る能力の持ち主である、と評価していた――任せる内容は当然念入りに選別しているであろうが。
「大龍橋を破砕し、防衛陣地を構築した第三軍の後衛戦闘隊がおおよそ四千程度、南方の東沿道において近衛総軍の後衛戦闘隊が八千名程度の兵力をもって遅滞戦闘を行っている
この龍州において追撃を防ぐ主力は以上だ。
皇龍道については小勢で主要な橋を破砕して妨害を行っている、こちらについては〈帝国〉軍もほとんど兵力を差し向けていないようだ」


「また、東沿道における情勢、および龍口湾にて再編を行っている敵部隊についてであるが、北領からの輸送、および〈帝国〉本土からの兵員輸送の情報を水軍から提供していただいた」
 そういって手持ちの帳面を閉じる。
「ここからは水軍にお願いしよう」

 水軍統帥部からこの会議に出席している笹島中佐は顔をあげていった
「それでは水軍より報告させていただこう。まず、通商破壊と封鎖線の突破については堅調だ。〈帝国〉水軍は本土との通商線構築、アスローン等との交易封鎖に専念しており東州灘への侵入等は行われていない。第二軍の収容以降も東海洋艦隊による警戒は行っている。
我々は葦川に陸兵団と河船を常時哨戒させ、陸軍部隊の収拾に協力している。」
 ――とはいっても河
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