第二話 異変その十
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「僕はちゃんとした男の子だから」
「ええ、わかってるわ」
姉の自分が一番だという返事だった。
「そのことはね」
「それじゃあこの話はこれで終わって」
「それでよね」
「今日はハンバーグ作るけれど」
エプロンをしている優花はフライパンを持っている、まだ赤いそのハンバーグを焼こうとしていることはそこからもわかる。
「上に何乗せる?」
「チーズか目玉焼きかよね」
「うん、どっちにするの?」
「そうね、チーズかしら」
少し考えてだ、優子は答えた。
「今日は」
「そっちだね」
「目玉焼きも捨て難いけれど」
それでもというのだ。
「コレステロールが気になるから」
「コレステロールも善玉と悪玉があるんだって?」
「そうよ、だからお肉はあまり気にしなくていいけれど」
「それでもだね」
「昨日ビールかなり飲んだから」
この言葉は少し苦笑いになって出した。
「だからね」
「今日はなんだ」
「卵控えるわ」
「それでだね」
「今日はチーズにしておくわ」
「わかったよ、じゃあ僕もチーズにするよ」
ハンバーグの上に乗せるものはというのだ。
「そちらにね」
「そういうことでね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「暫くビール飲まないわ」
こうも言うのだった。
「昨日本当に飲んだから」
「どれだけ飲んだの?」
「一リットルのジョッキ五杯開けたわ」
「合わせて五リットルだね」
「飲んだわ」
「飲み過ぎだよ、朝辛くなかった?」
「いえ、普通だったわ」
このことは笑って言えた。
「だから私お酒強いのよ」
「幾ら強くてもね」
「わかってるわ、飲み過ぎよね」
「また言うけれど」
「好きだからね、お酒は」
「好きでもお医者さんなんだし」
優花はフライパンの上に油をひきながらまた言った。
「健康には気をつけないと」
「医者の不養生ってやつね」
「うん、くれぐれもね」
「医者がお酒で身体壊したら元も子もないわね」
「歯医者さんが甘いもの食べ過ぎて虫歯になるようなものだよ」
「それこそね」
「だから気をつけてね」
くれぐれもという口調で言う優花だった。
「本当に」
「わかったわ、じゃあ今日は飲まないし」
「暫くだね」
「ビール飲まないわ」
「本当に頼むよ」
優花は姉に言った、その口調は男の子のものだったが声の質は前よりも女の子のものになってきていた。
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