第二話 異変その九
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優子は後輩の医師に大学病院にレントゲン室に案内されてそこで写真を見た。そして。
後輩が見せた腹部と胸部のその写真を見てだ、首を傾げさせて言った。
「不思議なレントゲン写真ね」
「そう思われますよね」
「ええ、男の子の十代後半の身体なのに」
「何か丸みがあって」
「ええ、華奢でね」
「女の子っぽいですね」
「男の子の身体なのに」
それでもとだ、優子も言うのだった。
「女の子っぽいわね」
「そちらに近いですよね」
「こんな身体つきの子がいるのね」
「そうみたいです」
「また珍しい身体ね」
「そうですよね」
「これ誰なの?」
「ええと、それは個人情報なので」
口ごもって言う後輩だった。
「公に出来ないですけれど」
「こうした子もなのね」
「いるんですね」
「そうなのね」
「いや、ちょっとこの子は」
後輩も不思議で仕方ないといった顔で言う。
「私はじめて見ました」
「中性的っていうか」
「女性的ですね」
「そんな風ね」
「本当にそうですね」
こう言うのだった、後輩は優子に対して。
「これは学会に発表出来るかも知れないです」
「こうした事例もあると」
「はい、そうも思いました」
「個人情報は出せないけれど」
「こうした子もいるんですね」
「そうね」
「本当にはじめてです」
後輩は驚きを隠せない顔のままだった。
「私も」
「貴女本当に驚いてるわね」
「だってこんなに女の子みたいな身体の男の子いないですから」
「ずっとこうだったのかしら」
「それまではわからないですけれど」
「確かに学会に発表すればね」
「色々と学術的にもありそうですね」
後輩は今は医師としてより医学者として優子に話していた。
「これは」
「私もそう思うわ」
優子はこの時はただそうした事例があるだけだと思っていた、だが。
家に帰って優花を見てだ、不意にだった。
急に心の中で疑念が起こりだ、その疑念は忽ちのうちに大きくなってそうして料理を作っている弟に言った。
「ねえ、優花ね」
「どうしたの、姉さん」
「最近どんどん女の子っぽくなってきていない?」
「そうかな」
「身体つきとか」
レントゲン写真を思い出しながら言った。
「声もね」
「気のせいじゃない?」
「そうかしら」
「確かに僕女の子っぽいって言われるけれど」
それでもというのだ。
「それはね」
「ないかしら」
「それはね」
優花は姉に言った。
「幾ら何でも」
「まあそうよね」
「何かよく姉さん最近そんなこと言わない?」
「そうかもね」
優子も否定しなかった。
「どうもね」
「幾ら何でも気にし過ぎだよ」
料理をしながらだ、優花は笑って言った。
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