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鎮守府の床屋
前編
8.冗談はクレープだけにしろ
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で大きい街ではないが、街のメインストリートになる商店街はそこそこ発展していて、日々の買い物には困らない。今回はそこの八百屋、魚屋、肉屋、果物屋、乾物屋に寄って、必要な食材を色々と仕入れる予定になっていた。

「んじゃ、ハルは八百屋と果物屋に行くクマ」
「お前はどうするんだよ」
「球磨は魚屋と肉屋に行ってくるクマ。これが提督から預かったメモだクマ」

 球磨はそう言って、提督さんのメモを渡してくれた。ふんふん。祭の露店を出すのにこの食材の量で足りるのか……と疑問に思ったが、よく考えれば鎮守府の面子は俺を入れても10人いないもんな。こんなもんでいいのか……

「んじゃ乾物屋で待ち合わせするクマ〜」

 片手をピラピラさせながら、球磨は肉屋の方角に消えていく。あのふざけたアホ毛女に買い物が出来るのか不安で仕方がないが、今までこうやって、毎年祭の度に食材を手配してきていたことを考えると、それも問題ないのだろう。

 俺はその後八百屋と果物屋に出向き、提督さんの指示通りに食材を手配した。一人の客が購入する量にしては少々多すぎるため……

「お客さん……そんなにたくさんのキャベツ、どうすんの?」

 と店番しているおっちゃんになにやら疑われたが、配送先で鎮守府の名前を出した途端に、

「ぁあ〜、あんたあの海軍鎮守府の関係者か。いつもご苦労さん。あんたも苦労してんだろ?」

 と急に態度が軟化し、妙な心配をされ始めた。苦労ってなんすか?

「いや、この界隈って相当な激戦地なんだろ?」
「らしいっすね。今一信じられませんけど」
「ぁあ、んじゃ今は落ち着いたのかな? 一時期はホントにひどかったよ。艦娘の子たちの入れ替わりも激しかったし、設立当初からいた艦娘の子も戦死しちゃったりとかで……」
「はぁ……」

 今の鎮守府の、あののどかっぷりからすれば、まったく信じられない話だ……。

 だが、それが事実であることを俺は知っている。あの鎮守府にいると、時々、球磨たちの戦死した仲間の話を耳にすることがある。皆、率先して話そうとはしないが、はかなくも悲しい思い出として、みんなの脳裏に刻まれているようだ。

「……まぁ、大丈夫っす」
「そうかい? まぁ注文の件はわかったよ。当日にキチンと届けるから」

 あの鎮守府で、艦娘のやつらと一緒にいると忘れがちなんだけど、やっぱ戦争やってるんだよなー……。

 同じような会話を果物屋さんでも繰り広げつつ、必要なものを注文し終わり、その後乾物屋に向かう。乾物屋を見ると、まだ球磨は来てないようだ。

「……ちょっと様子を見に行ってみるか。別に心配とかつまらんとかそういうわけじゃないんだからなっ」

 誰に言うでもない言い訳が口をついて出る。出発前に北上が妙なことを口走り
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