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鎮守府の床屋
前編
8.冗談はクレープだけにしろ
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 客が来たら『今日はハルはいないよー』って言うだけだろ?」
「しかも漫画から目を離さずに言うに決まってるクマ」
「二人で息ぴったりで罵倒してくるなんてちょっと酷くない?」

 何が息ぴったりだアホ。そら久々に街に行けるのはいいけど、この妖怪アホ毛女といっしょだなんてどんな罰ゲームだよっ。

「……まぁいい分かった。これは提督さんの指示なんだな?」
「そうクマ」
「そうだよー」
「んじゃとりあえず店じまいだけしとくか。北上、俺達が戻るまで留守番頼む」
「あいよー」

 そうだ。ここでうだうだ言い出しても始まらん。軍人ではないとはいえ、俺も鎮守府の一員。ならば提督さんの指示には従うべきだ。今日は店はもう閉店。これから買い出しに行くんだっ。

「ところで球磨」
「クマ?」
「買い出しって何を買いに行くんだよ。秋祭りとか言ってたな?」
「それは道すがら説明するクマ。とりあえず出発準備を急ぐクマ」
「あいよ」

 球磨に煽られながら準備を整え、バーバーちょもらんまのポールサインの回転を止めた後、おれと球磨は市街地へと出発する。鎮守府は人の居住圏からは少々離れた位置にあって、鎮守府と市街地の間には大きな山がある。市街地は海に面しているので、ならば直接海をわたって移動したほうが早い。俺は球磨が準備してくれていたボートに乗り、そのボートを球磨が牽引する形で市街地に向かった。

 市街地に向かう途中、球磨が簡単に説明してくれた。なんでも、この鎮守府では毎年1回、提督さんが主催で秋祭りを行うらしい。一応祭らしく、提督さんが露店を出店するそうだ。そのための買い出しらしい。

「荷物自体は業者に運ばせるから、球磨たちは注文だけすればいいクマ!」
「なるほどね」
「毎年その日は夜の哨戒任務も最低限にして、みんなで楽しんでるクマ!」

 確かにそいつは楽しみだ。提督さんはああ見えて料理がうまい。最初は鎮守府の食事を提督さんが準備していると聞いて何の冗談かと思ったけど、あの人って何を作らせても上手だ。大量に作るのって段取り力とかスピードとか色々要求されるけど、それをこなせるだけのスキルが、提督さんにはあるんだよね。

「そいつは楽しみだ! 提督さんの焼きそばとかりんごあめとか、きっとうまいんだろうな!」
「美味しいクマよ? 提督の料理は鳳翔直伝だクマ!」
「? 鳳翔? 艦娘か?」
「昔、ココにいた軽空母の艦娘だクマ! 料理屋を開けるぐらいに料理のうまい人だったクマ!」
「そっか! なら提督さんが料理がうまいのも納得だな!」
「クマクマ!!」

 その人も、きっと以前に轟沈したのだろう。そのことには、敢えて触れないようにした。

 港に到着したら陸に上がり、市街地で買い物を……というか仕入れをする。この街はそこま
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