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鎮守府の床屋
前編
8.冗談はクレープだけにしろ
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て断ってるじゃん」

 こいつよく知ってるなぁ。確かに暁ちゃんとビス子がやたら『一人前のレディーを膝枕してもいいのよ?』て迫ってくるけど、そこは断ってるんだよね。

「そらそうだろー。男が女の子を膝枕するってどうなのよ? 逆ならまだわかるけど」
「でも球磨姉はやってあげてるよねえ?」
「あのアホは一度言い出したら聞かないからな」
「でもそれってさ、仲いい証拠じゃない?」

 まぁ、そういう意味では仲いいのかもなぁ。でもお前が言うような仲じゃないぞ俺と球磨は。

「まぁ、乙女になってる球磨姉は想像出来ないね」
「だろ? 仕方ないから仲いいのは認めるけどな」
「ふーん……」

 幾分回復しつつあったモチベーションを大事にするため、再度おれは道具の手入れに勤しむことにする。北上は北上で、中断していた漫画の読破に再度意識を向けたようだ。のどかな時間が過ぎていく。何もない、何もしなくていい時間。こんな時間が最高の贅沢だと、俺は思うんだ。

 ……あれ? 店としてダメじゃね?

「いいんじゃない? 私は好きだよ? ヒマな時間を持て余すこのバーバーちょもらんま」

 なんだか店として一番言われてはいけない類の罵倒を言われた気がしたのだが、気にしないことにしておこう。

 そうして北上の暴言の存在を忘却の彼方へと捨て去った時、噂をすれば何とやら……あの妖怪アホ毛女こと球磨が、入り口のドアを乱暴に開けて来店してきた。

「ハルッ! そろそろ買い出しに行くクマッ!!」
「いい加減来る度にドアを破壊しかねん勢いで開けるのは止めろ!! ……つーか買い出し?」
「お? 北上から聞いてないクマ? 今日ハルは球磨と秋祭りの買い出しに行くクマ」

 ……いえ。まったく存じ上げませんが……?

「あーごめんごめん。私元々それをハルに伝えるためにここ来たんだった」

 そう言って北上は、漫画から手を離さずにケラケラと笑う。お前、こんな大切なことをなんで今まで忘れてたんだよ。お前、開店したときからずっといたよな? 今は昼過ぎだぞ?

「最初は私と球磨姉が行く予定だったんだけどねー。メンドクサイから提督に頼んでハルと変えてもらったんだー」

 そういうことを聞いてるんじゃない。5W1Hは今は問題じゃない。お前が言付けを忘れてたのが問題なんだ。

「北上が『私が伝えとくよー。キリッ』て言ったから提督も『なら任せたッ』て言ったんだクマ……」

 まー誰だって言付けぐらい『任せろ』って言われたら、それで済んだと思うよなぁ……北上〜……そういう大切なことはちゃんと確実に伝えろよ……。

「ごめんごめん。まぁ二人とも久しぶりの市街地なんだから、楽しんでくれば? 店番なら私がやっとくから」
「やっとくって言ってもあれだろ?
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