29.其の名は「告死」
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ェンバレットに完全に怯えてしまった。
理屈では分かっているのだ。あの刃や死の魔人の力が自分の方に向くことはないだろうと。だがそれを加味しても、あれはレフィーヤには怖すぎた。アズも怖がらせてしまったことを申し訳なく思って気を遣ってくれるが、それでもやっぱり怖いのである。
………オーネスト曰く、「お前が悪いんじゃない、お前の趣味が悪いんだ」。
………リヴェリア曰く、「レフィーヤの前ではこれから存在感を控えてくれ」。
………アイズ曰く、「アズ、本物の死神みたいで格好良かった」。
………ベート曰く、「嘘だと言ってくれよアイズ」。
長々と説明したが、いい加減に結論を述べよう。
今、レフィーヤの目の前にいるのだ、『告死天使』が。
「ん……あれ、レフィーヤちゃん?アイズちゃん達と一緒にいないなんて珍しいね?」
「そ、そそそそそそう言うアズライールさんもオーネストさんと一緒にいないのは珍しいですね!」
「ダンジョン以外では別々行動が多いんだ…………って、大丈夫レフィーヤちゃん?俺と一緒が嫌なら普通にこのまま通り過ぎてもいいのよ?」
「そ、そそそ、そうはいきません!人は恐怖に打ち勝ってこそ成長するものなんです………ッ!!」
(と、いいつつ小動物のようにプルプル震えてるんだけど……)
レフィーヤは、どうにかこの恐怖を乗り越えたいのである。
彼女とて一級とは言わずとも名高きロキ・ファミリアの名を背負う身。『千の妖精』の二つ名を与えられたレベル3の冒険者だ。そして、冒険者は苦難を乗り越えてこそ真に成長する。余所の冒険者に怯えてばかりでは、アイズの背中を追う身として恰好がつかない。
何より、主神ロキとアズに交友関係がある以上、いつまでも怖がる度にアイズの後ろに隠れて怯えている訳にはいかないのだ。故に今日、レフィーヤは協力者ゼロでこの苦難に挑むことにした。
――のだが。
(ひいいいいいーーっ!やっぱりこわいぃぃぃぃーーーっ!!)
注釈すると、レフィーヤはアズが怖く見えるのではない。
しかし、どうしてもアズの後ろや影にあの『死の魔人』の影がぶれて見えるのだ。今怖いのではなく、次の瞬間にそれが突然牙を剥くという勝手な妄想が脳裏にこびり付いてしまった。巨大なドラゴンの首をを音もなく刈り取ったあの死神の鎌が自分に向けられると想像しただけで、レフィーヤは心臓が止まりそうになる。
「えっと………俺は何をすればいいの?」
「ひゃっ!!」
何となく申し訳ない気分になってきたアズの気遣いの言葉さえ、レフィーヤにとってはビビりポイントになってしまう。そんな彼女に何かしてやれることはないかと気遣うのだが、気遣いのために動いたら相手を怯えさせる。しかしレフィーヤは恐怖に耐えてな
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