25.荒くれ者の憂鬱
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んな……今のは俺らしくなかった。くそっ、何度経験しても『この日』だけはナイーブになる……ガキが風呂で髪を洗いたがらないのと同じ気持ちなんだろうか)
オーネスト・ライアーは朝から憂鬱だった。
目が覚めた直後には「たまには二度寝くらいしてもいいか」と思って二度寝をしてはアズに起こされ、朝食では「たまには味わって食べるか」と思ってゆっくり食べてみてはメリージアに「美味しくなかった?」と涙目になられ、食後に「たまには郊外に釣りにでも行くか」と釣竿を出そうとしたところでとうとうアズに止めを刺された。
「おい、オーネスト。お前なぁ……いい年こいて牛歩戦術なんてやってんじゃねえよ!とっとと装備抱えてファイさんの所に行ってこいッ!!」
「……ぎゃふん、だな」
そう、オーネストにはダンジョン潜りから戻った翌日にやらなければいけない約束事がある。それは、ヘファイストスの所へ向きの整備と補充をしてもらいに行く事だ。しかも既に昨日の墓参りの際にヘファイストスと顔を合わせているため、向こうも既にオーネストが地上にいる事は承知済み。要件から逃げる隙がもうない。
ヘファイストスは決して悪い相手ではない。ないのだが……ないのだが……しかして、これ以上駄々をこねて約束を違えるのはオーネストの流儀に反するのも事実。まるで上に黄金のガネーシャ像が乗っているかのように重い腰を、ゆっくり持ち上げる。
「はぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜……行ってくる。明日の朝に帰るから晩飯はいらん」
「おう、いってらっしゃい。ファイさんにもよろしく言っておいてくれよな」
「どうせあの人の事だから昼メシも用意済みだろ。メリージア、弁当はいらん」
「はぁ〜い。では……いってらっしゃいませクソ野郎〜〜〜♪(※悪意0%)」
「行ってくる……」
完全に出張に行くお父さんを見送る親子である。ただし、何故かアズがカミさんに見えるが。
……とまぁ、こうしてオーネストはヘファイストス・ファミリアのホームへと重い足取りで向かっているのである。
いつからだろう、こんな子供のような駄々をこねてまで苦手な事を避けようとしたのは。過去を振り返り、今の自分と比べる。昔は……そもそも、逃げる余裕もなく理不尽が殺到してきていた。逃げるとか逃げないと考える余裕もなかった。
「まるで微温湯、だな……」
ぽつりと口をついてそんな言葉が漏れる。
オーネストの生活は、年を追うごとに楽で安定したものになっていく。8年前の自分とはまるで別物のように思えるほど、今のオーネストには不自由がない。潤沢な資金、屑に負けない力、『狂闘士』という役割。そして――裏切りも死別もしていない、友達。
かつて、泥に塗れながら路地裏をかけた日々。千の夜、万の出会い。数えきれな
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