22.朝霧の君
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もしてなよ。髪をとかしたらすぐ行くから」
「お姉ちゃんってお洒落にはあんまり興味ないのに、髪のお手入れだけは欠かさないよね。なんか不思議ぃー」
「髪は女の華なのよ!分かったらマナも自分の髪のとかし方くらい覚えなって。その年にもなってお母さんに任せきりはイカンよ?」
はぁい、と熱意の籠らない返事をしたマナはすたこらさっさとファミリア所有の練習場へと走った。
ふと一瞬だけ「マナも行ったし今なら寝られるな」と魔が差すが、流石にそれは非道だと思ってドレッサーへ向かう。母から譲り受けた年季の入っている櫛と、ツバキ油などのごく少量の手入れ道具たち。それを手に取ったココは慣れた手つきで髪をとかしていく。
地上でもダンジョンでも欠かさず行うこの手入れが彼女の美しい髪質を保っている。
「………よし、こんなもんかな!」
鏡に映る自分の髪をチェックしたココは、いそいそと戦装束へと着替えはじめる。
戦の中に於いて尚も艶やかに、そしてしなやかに踊る黒髪の狩人。
彼女の主神でるオリオン直々に『朝霧の君』の二つ名を授かったレベル5の冒険者の1日が始まる。
= =
マナ・ラ・メノゥはクォーターエルフだ。
父はハーフエルフ、母は人間、だからマナにはエルフの血が4分の1だけ流れている。
世の中では一般的にエルフは大別してハイエルフ、エルフ、ハーフエルフの3つとされている。
エルフは一般的なエルフであり、ハイエルフは高貴な血の流れるエルフ。そしてハーフエルフはエルフと別種族――ヒューマンの場合が多い――の間に生まれた子だ。
ハーフエルフまではエルフの特徴である尖った耳が目立つが、それ以上エルフの血が薄くなるとその特徴が表れにくくなるため、クォーターエルフという言葉は殆ど使われることがない。マナ自身、同じクォーターエルフに出会ったことは未だにない。
8歳になるまで、マナは自分が母親と同じ魔導師になるものと信じていた。
4分の1に薄まってもエルフはエルフ。魔法の素養は人並み以上にあるし、女の身である自分は前に攻めるよりは後ろから援護する方が向いているとごく自然に思っていた。両親もそれを否定することはなく、魔法を使わせるために勉強に力を入れさせた。
そんな折に、マナは運命的な出会いを果たす。
ココ・バレイシオスだった。
歳が近いこともあって、マナは比較的年齢の近いココに興味があった。エルフの血など一切流れない彼女は生粋のスキタイだ。故に握るのは剣と盾であり、マナとは全く別の存在。だからこそ興味が湧いた。ココはココでオリオン・ファミリアに知人が殆どいないせいかマナに歩み寄ってきた。二人は直ぐに打ち解け、姉妹のように親しくなった。
ココは年齢の割に
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