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鎮守府の床屋
前編
7.提督だったら……いいよ
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〜……キモいクマ……球磨が悪かったクマ」
「分かればよろしい」
「うむ。すまんなハル。うちの球磨が粗相をして」
「いえ。大丈夫です」

 わかりゃーいいんだわかりゃー……提督がごきげんで店を出て行った後、まだ腑に落ちないといった表情をしてむすっとしていた球磨に、俺は特別サービスとして梵天で耳の中をふわふわしてやることにした。

「ほら球磨、散髪台まできて座れよ。梵天やってるから」
「クマァ〜……」

 やはり梵天の魅力には勝てなかったらしい球磨は、思いの外素直に散髪台にやってきて椅子に寝転んだ後、自ら右耳を見せた。……と思ったら……

「やっぱ膝枕の方が座りがいいクマ」
「マジかい……」

 しゃーない。こいつは言ったら聞かんからな……んじゃソファ来いよ。

「クマクマっ」

 昨日の耳掃除の時と同じく、お客さん用の長ソファに隣り合って座り、球磨が俺の膝に自分の頭を預けた。言っとくけど梵天だけだぞ?

「了解だクマ〜……」
「うつ伏せになって顔だけ横向けなよ。胸の下にクッション敷け。その方が楽だから」
「クマッ」

 球磨の髪を耳にかけてあげ、左耳を顕にした後、梵天で耳をふわふわと掃除してあげる。球磨は実に気持ちよさそうに……

「クマァ〜……きもちいクマ……」

 と反応していた。左耳終了だ。はんたーい。

「クマ……」

 素直に頭を反転させ、俺の腹の方に顔を向ける球磨。こいつがここまで素直に俺の言うことを聞いたことなんて今まであっただろうか……そんなことを思いながら、梵天で右耳をふわふわと掃除する。

「球磨ー」
「……」

 あれ……さっきまであれだけうるさかったのに、なんだか急に反応が無くなったな……。

「球磨ー。終わったぞー」
「……スー……スー……」

 どうにも反応がないと思ったら……いつの間にか球磨は寝ていたらしく、静かな寝息が聞こえてきた。そういや昨夜は哨戒任務でずっと出撃してたんだっけ。そら眠いはずだわな……

「……球磨、おつかれ」
「スー……スー……」

 戦士の休息ってやつか。野郎の膝枕で申し訳ないが、それでいいならゆっくり寝てくれ。

「ハル〜? 球磨姉しらなーい?」

 タイミングよく北上が入店してきた。北上は俺と球磨を見るなり……

「ぷっ……球磨姉……なんか多摩姉みたいじゃん」

 と言っていた。多摩姉って誰だ?

「ぁあ、私の姉で、球磨姉の妹。私達姉妹の次女」
「あーなるほどな」
「まぁ、轟沈しちゃったんだけどね〜」
「……ヤなこと思い出させちゃったな。すまん」
「別にハルが謝ることじゃないよ。戦争だしね」
「……」
「でもさ。ホント多摩姉そっくり。多摩姉もうれしいかもね。自分の姉が自分にそっ
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