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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
15.誰ガ為ノ虐殺
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』んだ……戦いにすらなっていない)
(か、格が違いすぎる――この高みに至るまで、私たちはあと何年修行すればいいの……?)

 想像を絶する実力。「無法者の集まり」などと甘く見ていた連中の本当の力。
 その場の誰もが、おのれの傲慢と実力不足を叩きつけるように思い知らされた。

 ――本当の高みはヴェルトール達の方じゃなく、自分たちの後方にあったということには気付かずに。



 = =



「それで」

  血肉と臓物で敷かれたレッドカーペットを踏みしめ、鮮血を全身に浴びた男が、ゆっくりと歩きながら白装束と魔物の群れに近づいていく。
 骸の氷像を越えた先へ静かに、しかし確実に、目には見えない暴虐と殺戮の壁が迫りくる。

「次に死にたいのは『どれ』だ?」

 『酷氷姫』に止めを刺そうと近づいた複数人の白装束の顔面を剣で粉砕したその男の殺意を浴びた瞬間、白装束達の従えていた魔物たちが一斉に発狂した。

 生物的な本能が、『自分は今から死ぬのだ』と告げた。理性が飛び、野生は敗北し、魔物たちにとっての世界が、その場で終了した。だからこそ、特別な強さを持たない低俗な魔物が選ぶ道はただ一つしかなかった。

 一刻も早く『死の恐怖』から解放されるために、自ら『死』へと向かう。

 その場にいた全ても魔物が、暴虐の中心である『(オーネスト)』へ、生からの開放を求めて殺到した。殺戮という名の救済を求めて、一刻も早くこの世からの消尽と永遠の安らぎを願って。
 向死欲動――自らを滅ぼすために駆け出した魔物たちを待っていたのは、望み通りの結末。

 大地に巨大な亀裂が入る力で踏み込んだオーネストは、その剣に圧倒的な破壊の意思を込めて魔物の群れへと振るった。

「死に魅入られたか――下らん存在だ。失せろ」

 グオオオオンッ!!というおおよそ剣を振るったとは思えない音を立てたオーネストの一撃は、正面にその破壊力を巻き散らして眼前の全てを粉微塵に粉砕した。有象無象、例外なし。すべてが等しくオーネストの剣の余波で爆砕し、100匹近い迷える魂は肉から解放された。

 遅れて、ビシャァァァッ!!と水の塊が叩きつけられたような水音がダンジョンに響く。
 砕かれた魔物の骨肉や血が、オーネストの剣の放射線状にぶちまけられて壁や床を真っ赤に彩った。

「莫迦な……」

 血肉を全身に被った『赤』装束の声に、初めて動揺の陰りが見える。
 自らが手なずけ、命令を遵守するはずの同士たちが死んだ。それも、自ら望んで飛び込み、屠殺された。殺意だけで正気を狂わされ、コントロール下を勝手に離れていったのだ。

 レベル5,6クラスなら魔物を微塵に切り裂くも吹き飛ばすも思いのままだろう。
 だがオーネストが見せたそれは、あま
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