9.紅の君よ、呪われてあれ
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口を開いて得物を見下ろす。
男は気にしていなかったようだが、この部屋――いや、魔物の餌場である『食糧庫』全体が食人花の苗床になっている。つまり、男が一つ合図を送れば、腹を空かせたヴィオラス達は壁や天井から這い出してすぐさま目の前の男を貪ることが出来る。
並の冒険者では撃破することも難しい大量のヴィオラス達が出現し、一斉に男へ殺到する。
その様子を見た男は、焦るでもなくゆっくりと身をかがめ――両手を交差させながら壁に向けて一言呟いた。
「おおっと、『刺』ッ!!」
「何ッ!?貴様……!!」
男の手元が妖しい黒霧を纏い、数十本の鏃付鎖が虚空を乱れ飛んだ。
複雑に絡み合いながら天井や壁に次々命中した鎖は建物を貫通して再び部屋に戻り、男へと殺到したヴィオラス達を四方八方から貫き、絡め、削り、吹き飛ばしていく。
男が魔物を殺すために取ったアクションは、ただその一瞬の動きだけだった。
『ギシャアアアアアアアアアアアッ!!?』
「うえっぷ、汁と破片だらけで余計に悪趣味な部屋になっちまったな……ま、いいか」
男が顔を上げた時には、ヴィオラスは唯の一匹も残さずズタズタに引き千切られて床に息絶えていた。先ほどの一瞬でサポーターだと決めつけた男が繰り広げた、圧倒的で一瞬の虐殺。
物理法則を超越した質量の出現は、何らかのスキルか、或いは魔法か、将又マジックアイテムか。壁を貫通して自動追尾的に魔物を殺したことから鑑みても、魔法関係の可能性が高い。
(だとしたら全く新しい魔法……しかも、この威力と汎用性で詠唱破棄可能だと………!?無害そうな面をして、出鱈目な!!)
「にしても……ヴィオラスって言うのか、この人食い花。見たことない魔物だな」
興味深そうにしゃがみ込んで引き裂かれたヴィオラスの死骸を摘まむその男に、『白づくめの男』は未だ嘗てない戦慄を覚えた。今、この瞬間の隙をついてでもこの男を殺さなければ、後後で自分に――『彼女』に致命的な何かを齎す予感が、反射的に体を動かした。
「ウオオオオオオオオオッ!!」
その身に与えられし、人間の限界を突破した膂力が空気を割いて振るわれる。
男はしゃがみこんだまま動かず、ぼそりと呟いた。
「――阻めよ、『護』」
「ぐうッ!?」
ノーモーションで展開された鎖が男を覆い、壁となって立ちはだかる。人間の骨肉など容易に粉砕する拳が叩きつけられるが、まるで巨大な壁を殴っているようにびくともしない。
深く息を吐いて更に力を込めた数十発の拳を叩きこむ。
ガガガガガガガガガガッ!!と轟音が部屋に響くが、撃ちこんだ本人は渋面に顔を歪ませる。
「莫迦な………たかが鎖がたわみもしないだとっ!?」
「あ
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