壱章
魔王の子〜下〜
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いる者も多く居る。
信忠によって屋敷に封じられていたせいか、最近後者のような噂が尚更騒がれているらしい。
友人達と会えなくなるのは予想していたが昔から傍に仕えていてくれた【侍女達】をも遠ざけられてしまったのは誤算だ、だが……表向きは辞めたことにし姿を変え、自らの意思で私のすぐ傍に控えてくれているので結局辞めさせたことにする意味はなかったが…其方も、色々めんどい。
まぁ、一緒に居てくれるのはありがたい。
織田に来たばかりの頃は一層の事生まれなければ良かったなんて思うことがたまにあった。
かと言って私が憶えている土御門に来る前の頃の記憶はあまりない。
時折ふと朧気で小さな記憶の断片を思い出すことはあるがどれもバラバラで繋がらないようなものだ。
『誰かが笑いながら私の頭を撫でていた、私はそれを受け入れ心地好く思っていたこと』
『かつて【片割れ】がいたこと』
『目の前に大きな白い獣が倒れていてそれを見つけた私が泣き叫びながらもう二度と起きることのないその獣を揺すり続けていたこと』
『同じくらいの女の子とよく遊んでいたこと』
『何処かに閉じ込められ独りで泣いていたこと』
『燃え上がる場所で誰かに対し、怒りの篭った目をして斬りかかったこと』
他にも色々な断片が突き刺さる。
他愛の無いものから本当に自分なのか疑うようなこと、昔の私にとっては重要であろうことまで、……それらを思い出しても何故、どうしてそうなったかはわからない。
本当にバラバラなのだ。
何時か、全ての記憶を思い出すことが来るのだろうか?
別に思い出せないからといって悩んではいないがやはり気に掛かる。
_______開けられた小窓から僅かに首を上げ夕焼けに染まった空を見上げる。
もし全てを思い出せたなら、私はどうなるんだろう?
今よりもっと苦しむことになるか、それとも………。
____あぁ…いけない、明日の準備を忘れていた。
面倒だが一人になるのには丁度いい機会だ。
それに彼処の水は清いから嫌な思いを洗い流してくれるだろう。
ほんの少しだけ、楽しみだ。
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