壱章
魔王の子〜下〜
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
士達の話を聞くのもいいかもしれない。
「それじゃあ、僕は御屋形様にそう伝えておくよ、邪魔して悪かったね。
ホントは別件で京に来たからなるべく早めに帰らなきゃ…それじゃ楽しんでくるんだよ」
信孝は微笑を浮かべた後。そのままぎこちなく背を向け自室から立ち去って行った。
やはり気になる、僅かに信孝が窶れているように見える。
それにいつも傍にいる【彼】が居なかったような気がする。
______嫌な予感がしたものの今はどうすることも出来ないし、若しかしたら勘違いかもしれない。
多分『例の事件』の後処理で疲れているだけだろう。
そんな曖昧で不快な気持ちを落ち着かせるため信芽は部屋の小窓から庭を見ることにした。
どうやら小鳥がいるらしい、信孝と話していた時から鳴き声が聞こえていた。
鳴き声からして雀だろう。
二、三羽チュンチュンと愛らしい声で囀っている。
暫く彼らの歌やら話し声を聞いていると廊下から二人の女の声と足音がこちらに近付いてきた。
信芽は慌てて小窓を閉め、息を潜める。
…どうやら屋敷にいる女中のようだ。
片方は最近この屋敷に来た新参の…確か名は純子(じゅんこ)ちゃん、もう一人は以前から居た者だ。
*
*
*
*
*
「_____あの、此処に居られる姫君は何方なのですか?」
「あぁ…、此処に居られるのは大御所様の御息女・信芽様よ。」
大御所様とは現在、嫡男の信忠に当主の座を譲り形上は隠居している信長のことだ。
最も政や戦の指示は全て彼が行って居るので織田家の頂上に立っているのは今も昔も彼だろう。
「まぁ…!、信孝様や信雄様、冬姫様の他にも御子が居られたのですか?」
「その冬姫様の姉君が信芽様、大御所様の実子ではないけれど…とても麗しい方でしょう?」
「えぇ……今は浅井家に嫁がれたお市様とはまた違った美しさを感じております。
お市様には妖しい魅力と儚い美しさを感じておりましたが、信芽様は気品ある立ち振る舞いと…独特の雰囲気、なんというか【神懸かった】雰囲気をお持ちで………。」
「…そういえば貴女は信芽様の元に遣わされる前はお市様付だったわね……。
ならあの方のことも少し話しておきましょうか。」
____信芽、かつての名を土御門 巡音(つちみかど めぐりね)という。
名の通り他の兄弟とは違い、信長の実の子ではなく臣下の土御門家出身の娘である。
女ながらに優れた智勇と麗しい容姿。
教養の深さから女義経、女丈夫と称され多くの人々に慕われている。
此処に封じられる前は
父の死後、弟の蘭丸と共に信長に引き取られ信忠に仕えている鬼武蔵・森 長可(もり ながよし)と
その妻の、父は大御所様と乳兄弟である池田恒興の娘・池田 せん(いけ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ