IF 完全平和ルート
偽装結婚シリーズ
偽装結婚の最高潮
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ツ 。
そして、届いたからこそ――相手の体が目に見えて硬直する。
戦うために張りつめていた全身の筋肉は無防備に弛緩し、冷静に相手の行動を見定め最善の一手を掴み取るべく高速で働いていた思考が停止する。
茫然自失、驚天動地、慮外千万。
ありとあらゆる驚きの感情を混ぜ合わせ、煮詰めて、溶かし合わせた様なその態度。
武人であれば、否、武人であればこそ戦場で犯してはならぬ失態。
ぽかんと口を明け、これでもかと言わんばかりに目を見開いた相手の間抜け面に苛立ちこそ覚えはしたものの、男は直ぐさま地を蹴って相手へと肉迫する。
「――……っ!」
相手が驚きに支配されたのはほんの一瞬の間。
直ちに我を取り戻して迎撃態勢に移ったが、その隙を見逃す男ではなかった。
地を蹴り、相手へと接近し――そしてその勢いのままに愛用の獲物を振るう。
無防備な腹部へと叩き込まれたのは兇悪としか言いようの無い横殴りの一撃。
あまりにも強力な一撃は相手の纏っていた鎧を砕いて、その先の無防備な生身にまで容赦のない威力を届かせた。
――相手の体が宙を舞って、そのまま背後の岸壁へと打ち付けられる。
「か、はっ……!」
凄まじい破砕音と破壊音とが響き渡り、相手の表情が苦痛に歪む。内臓を圧迫され、開かれた口の端には真紅が滲んだ。
全身を強打したせいで悲鳴を上げる痛覚が警報をかき鳴らし、苦痛から解放されるための防衛手段として意識が闇に沈む。
糸の切れた傀儡人形の様に相手の体から力が抜けて、強い輝きを放っていた黒瞳の焦点がぶれる。
重力の法則に従ってその細い体が張り付けられていた岸壁より離れて、地上へと墜落する――その寸前。
――――紫の炎を帯びた骸骨の腕は、意外な程優しい動きでその身をそっと掬い上げたのであった。
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