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IF 完全平和ルート
偽装結婚シリーズ
偽装結婚の最高潮
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 男の纏う天狗型の人型も男同様に剣を握った片手を天高く振りかぶれば、それまでの飄然とした態度を改めた相手も印を組む事で応じた。
 両指を絡めて掌を合わせた印が完成したのとほぼ同時に、地表より数え切れない程の大量の樹木が生い茂り、大天狗の四肢に絡み付く。そしてそのまま相手を大地へと屈服させようと木々が荒れ狂った。

 足を取られ、地へと引き摺り落とそうとする攻勢のせいでバランスを崩しながらも――大天狗は凝った戦場の空気を両断する様に、振りかぶった勢いのままに手にした剣を地上目がけて振り下ろす。

 長大な剣が崖を両断する勢いで振り下ろされて轟音が響き渡ったのと同時に、紫の炎が霧散したせいで標的を締め上げていた木々が空振りする。

 ――そうして実に一拍遅れる形で、二人の耳に遠くで何かが大きく弾けた様な音が届いた。

「し、始末書が……! 始末書が……! なんて事を……っ!」

 間一髪の所で霊器による一撃を避けたものの、先程の爆音が何を意味しているのか不幸にも察してしまった相手の顔から、音を立てて血の気が引いていく。

 剣の余波を受けたせいで巨大な土塊が幾つも落下して来る中、次いで響いて来たのは雪崩を思わせる不吉な音。
 腹の底から人体を震わせる音が途切れる事無く響いて、間もなくその音の正体が判明する。

 巨大な天狗型の須佐能乎の揮った剣の一撃は、彼らの戦っている戦場よりも遠く離れた所に位置する湖にまで届き、堰を崩された湖水がその勢いのままにこの地へと押し寄せ――濁流と化した水の流れが、頭上より滝と紛う勢いで降り注いだ。

「いい加減にしろ、マダラ! お前、今朝からなんか可笑しいぞ!!」
「誰のせいだと思っている!!」
「オレのせいかよ!」

 憤然と吠えて手にした刀で斬り付けて来た相手の攻撃を、男は手にした団扇で受け止める。そうして相手が次の行動に移すよりも先に、無表情な面差しとは対照的に怒りに満ちた眼差しで相手を睨みつけた。

「貴様こそいい加減にしろ、柱間! ――この際だからはっきり言わせてもらうぞ!!」
「ああ!? 何だよ!!」

 かち合った刀を支点として、身軽に相手の体が空を舞う。
 地に足が降り立ったのと同時に死角となる背後から攻撃してきた相手の足蹴りを篭手で受け止め、そのまま男は片手を真横に薙ぎ払う。

 ――――そうして、今までに溜まりに溜まった鬱憤をかなぐり捨てる様な勢いで、男は声を張り上げる。

「何人紹介されようが答えは一緒だ! ――いいか!? オレは貴様以外の女を妻と呼ぶ気はない!!」
「…………………………は?」

 その声は滝の様に降り注ぐ水の音にも紛れる事無く、いっそ鮮烈な響きを持って相手の耳に届いた。

 ナ ニ イ ッ テ ン ダ 、 コ イ
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