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八神家の養父切嗣
二十七話:ホテル
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ア! 後ろの敵を全力で撃ち落としてッ!」
「だから、それやったらあんたまで―――」
「全然平気、私は前方の敵を落とすからお願い!」
「ちゃんと聞きなさいよッ!!」

 聞く耳を持たないとはまさにこういうことなのだろう。スバルは自分が仲間か敵のどちらかに撃ち落とされる可能性を理解しながらも止まらない。ティアナはある意味で普段通りの暴走に悪態をつきたいのを我慢しクロスミラージュにカートリッジを装填する。しかしながらその引き金を引くことはできない。

 味方に当たると分かっていて撃つのは敵に立ち向かうのとは違うプレッシャーを伴う。そもそも普通は撃たない。しかし撃たなければスバルは確実にガジェットに撃ち落とされる。何とかガジェットだけに当てようと汗ばんだ手で引き金に指をかけた時、ティアナ達の前を赤い風が通り過ぎていった。

「一撃―――必倒ッ!」

 そんな仲間達の混乱を知ることなくスバルはリボルバーナックルでガジェットを貫く。ひとたまりもなく爆発するガジェットを見送り、既にすぐそばまで迫ったレーザーに覚悟をして目を瞑る。

 次の瞬間には体に衝撃が訪れるだろうと思ったがそれは来なかった。代わりに届いたのはシールドでレーザーを弾く音。ハッとして振り返るとそこには自身を守るヴィータの姿があった。

「スバルッ! 勝手に暴走しやがって、馬鹿かてめえはッ!!」
Schwalbefliegen.(シュヴァルベフリーゲン)

 独断専行で危機的状況に陥ったスバルを怒鳴りつけながら器用に鉄球を打ち出すヴィータ。一機は鉄球に当たって落とされたものの他の二機は上手く躱してしまう。だが、そこまでは予想済みだ。

 よけた方角へ突進していきアイゼンで吹き飛ばし、もう一機へとぶつけて動きを止める。そのまま間髪を置かずに巨大な鉄球を上から叩き付けるように飛ばし、二機纏めて粉砕する。そして、怒りの形相を向けてスバルへ向き直る。

「ケガすると分かっていて突っ込む馬鹿が居るかよ! しかも自分ごとを撃ち落とせなんてふざけたこと言いやがって。おまえは今まで何を学んできたッ! 何があっても生きて帰ってくる訓練だろうがッ!!」
「すみません。でも……逃したら被害が出るかもしれない。それだけは認められないんです」

 謝りながらも直す気がない発言にヴィータの怒りはさらに上がりさらに怒鳴りつける。しかしながら、それでもスバルは動じない。

「そういう一丁前の言葉は自分の身を守れるようになってから言えって言ってるんだよッ!!」
「それでも―――目の前で誰かが傷つくのは耐えられないんです」

 その言葉を聞いた瞬間にヴィータは思わずゾッとした。言葉の内容以上にその瞳が余りにも澄んでいて。まるで透明なガラス球を覗いているような気分に襲われたから。
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