暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
前編
5.拉致。そして昼寝。
[2/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「んでさっきの話だけどさ。ハルはどうすんの? 明日は大掃除で忙しいから、誰もこっちにはこないと思うよ」
「だったら掃除の手伝いに行ってもいいなぁ。うちの店はいつも掃除してるから平気だし」
「おっ助かる! じゃああたしから提督に伝えとくよ」
「うん頼む。明日は朝に執務室に行くって言っといて」
「りょーかい」

 というわけで今日、おれは鎮守府の大掃除をするべく、朝から執務室に顔を出した。今は提督さんの指示で、この大浴場の女湯を掃除している。俺に割り振られた担当は、女湯も含む大浴場すべての清掃。デッキプラシを使っての床掃除も浴槽の清掃も終了していて、今は手桶と腰掛けの掃除をしている。これが終われば、次は男湯の方の掃除だ。

 実は俺は、この手の『無心になれる作業』というのが案外嫌いではない。何も考えず、ただひたすらに汚れを落としていく……こういった作業は、頭を空っぽに出来てとても気持ちがいい……

「……」

 手桶を一つひとつ丹念に磨いていき、さぁ次は腰掛けにとりかかろうかと思って、その一つを手に取った、まさにその時だった。

「クマッ!!」
「? 球磨?」

 唐突に浴場の入り口が開き、球磨が浴場に入ってきた。その表情は真剣で、何か鬼気迫る顔つきをしている。肩で息をしている辺り、とても慌てているように見えるが……?

 球磨は俺をちらっと見た後、周囲の様子を探るためか深刻な表情で顔をブンブンと左右に振っていた。

「……」
「なんだよ。お前確か宿舎の方の掃除担当だろー? こんなとこで油売ってないで……」

 俺がそう言いながら、手に持っていた腰掛けを床に起き、球磨に近づいたその時だった。

「クマッ!!」
「がふぅっ?!」

 唐突に、クマが拳を俺の腹に突き刺してきやがった。俗に言う腹パンというやつで、初対面の時に俺の腹に突き刺してきた拳と同じく、『ドフッ』というえらくリアリティ溢れる音と共に、コークスクリュー気味に俺の腹に拳がえぐり込んでいく。その拳は、初めて会ったあの時と同じく俺の肺から空気を1シーシー残らず絞り出し、俺の呼吸をストップさせた。

「かひゅー……な、なんてことを……かひゅー……」
「クマ……」

 俺が、腹を殴られた痛みと呼吸の出来ない苦しみで床に倒れ伏して悶絶していると、球磨が周囲の様子を確認したのち、俺の服の襟を掴んで脱衣所に引きずっていった。そのまま高さが俺の身長ほどあるロッカーを開いた球磨は、俺をそのロッカーの中に投げ入れ……

「クマッ!」
「ぐあっ?!」

 自身も同じロッカーに入ってきて、ロッカーの扉を閉じた。この狭っ苦しいロッカーの中に、俺は球磨と共に閉じ込められた。

「な、何をするんだ球磨……かひゅー……かひゅー……」
「シッ! 今外
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ