Side Story
少女怪盗と仮面の神父
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ミートリッテの身辺を調べ尽くした上で、眠っているタイミングを狙って家に侵入し、船上へと拉致した末に、こうやって脅しているのだから。
本心では、ねじ切れるくらい首を横に振っていても。
大切な人の安全を思うなら、今は大人しく男達に従うより他にない。
「……何を、持ってこいって……?」
精一杯絞り出した声はあまりにも小さく、震えていた。
笑う男達の耳に届いたかどうか、一瞬不安になったが。
了承の意を汲んだらしい目の前の男が突然真顔になり、空になった酒瓶を床へ放り投げ、両足を降ろして上半身を軽く乗り出してきた。
「指輪だ」
「……どんな?」
「銀の台座に丸型の小さな青い石が付いてる。隠し場所は礼拝堂の正面奥、でかい女神像の左手首」
「手首? 指輪なのに?」
「鎖を通して腕輪にしたのさ。まさかって所に隠すのが本業の技術ってな。ああ、独学素人上がりのアンタにゃ想像もできねぇか?」
さすがにキレた。窃盗行為なんかに学びも素人も本業もあるものか。
大体、好きでこんな道を選んだわけじゃない。
他に方法が見つからなかっただけだ。
「その独学素人上がりに盗みを強要してんのは誰よ。自分自身のうっかりを他人に拭わせるヘボ海賊の分際で、上から目線はやめてくれる?」
「はは。威勢が良いのは大いに結構! だが、時と場所と状況は、常に頭で押さえときな。今すぐその可愛いネグリジェを引き裂いて精神が壊れるまでヤっても、俺達にゃ不利益はまったく無ぇんだぜ。アンタは仕事が速いから使おうと思っただけ。別のヤツに任せても一向に構わないがな。その場合はオネェサマの無事も保障外だ。さて、……どうする?」
テーブルの上で両肘を立て、重ねた両手の甲に顎を乗せる男。
黒い目がギラリと不気味に光るのを見たミートリッテは、口惜しさ紛れに小さな声で「クソ野郎」と吐き捨てるのがやっとだった。
「隣の女の人。これ以上、彼女に乱暴な真似しないで。本当、男って最低。品性の欠片もありゃしない」
「理知を気取るなよ、泥棒女。アンタも所詮は動物と同じ。ヤることヤって産むモノ産んで、悦楽と自己満足に浸るケダモノだろぉが」
「胸クソ悪い。それが女の在り方だと思ってんなら、今すぐ魚に食われて、海の底で白骨化してくんない? あとね。自分を支えるので手一杯だから、子供なんかは一生産まないわ。背負い切れないと分かってるものを望むほどバカでも無責任でもないの、私」
「……責任、ねぇ?」
ふんっ! と横向いた少女の耳に、男の含み笑いが滑り込む。
男自身への嘲笑ともミートリッテに対する嘲りとも受け取れるため息に、わずかな疑問を持って振り返るが。
目蓋を伏せた男の感情は読み取れない。
「まあ良いさ。受け
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