第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十 〜激突〜
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見ている。
「これから黄巾党との戦いが終わるまで、全軍の指揮を、執っていただけないでしょうか?」
「何故、そのように言われる? 私は無位無官、出自すら怪しきものですぞ?」
「いえ。今は、そのような事に拘っている場合ではありません。それに、指揮系統が散らばっていては、戦場で不利にはなっても、決して有利には働きません」
「これはな、ワシと月で相談した結果なのじゃよ、土方殿」
顔色の優れぬままの丁原が、後を紡ぐ。
「貴殿の指揮官としての才は、申し分がなかろう。それに、決断が的確で、迅速じゃ」
「ですが、実戦経験は丁原殿も、董卓殿も豊富ではありませぬか?」
「ワシはこの通り、明日をも知れぬ身体。到底、総大将の重責には耐えられぬよ」
自嘲気味に、丁原は笑う。
「私も、ずっと土方さん達を見て来ました。そして、考えた末の結論です」
「……どうやら、戯れではないようにござるな」
「冗談でこんな事は言いません。それに、これは他の皆さんの総意でもあります」
そう言って、董卓は、麾下の諸将を見渡した。
「ボクは、月以外には智を使わない。……けど、月の頼みだから。し、仕方なくよ!」
「私も、この武は月を守るため。だが、貴様が月の味方である限り、力添えしよう」
「二人とも、素直やないなぁ。ウチ、いっぺんアンタの指揮で戦ってみたんや。月があかん訳やないけど、是非ともアンタの真髄、見せて欲しいねん」
三者三様だが、それでも皆、月の意向に従うつもりのようだ。
「恋も、良いな? お前の強さ、土方殿なら遺憾なく、発揮させてくれよう」
「……ん。恋も、それでいい」
呂布も、頷いて見せた。
「……わかり申した。ただ、一つだけ懸念がござる」
「何でしょうか?」
「将の皆様はこれで良いとして。兵は、私の命では従わぬ者も出てくるでしょう」
「それは、周知します」
「いえ、それでも人間というもの、明確な上下関係がなければ動かぬ者もおりますれば」
「では、何かお考えがあるのでしょうか?」
私は、ゆっくりと頷く。
「董卓殿が、総大将で宜しいかと存ずる」
「ですが、それでは」
董卓が反論しかけたのを、私は手で制した。
「続きがござる。総大将は董卓殿ですが、拙者は参謀長という事で如何でござるかな?」
「参謀長?」
耳慣れぬ言葉なのか、董卓と丁原が、首を捻った。
「然様。拙者の国の軍制にござるが、戦場での最高責任者は司令官。実質的な作戦立案と、部隊の運用全般に当たるのが参謀長と申す。最終的な決断は無論司令官の任にござるが、実質的な総大将が参謀長、という事例は枚挙に暇がありませぬ」
「……つまり、土方さんが私の側に。その提案を私が承認する。そういう事ですか?」
「
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