第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十 〜激突〜
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、陣を飛び出していく。
「お兄ちゃん! それを貸して欲しいのだ」
と、鈴々が双眼鏡を指さした。
「構わぬが。どうするのだ?」
「あの木に登って、敵の旗とか、数を見るのだ」
一本だけ、他よりも背の高い木が、生えている。
確かに、これならば敵情を見渡すには格好だが。
「だが、かなりの高さだぞ。気をつけよ」
「任せるのだ♪」
双眼鏡を渡すと、鈴々は首に提げ、するすると木の幹を登っていく。
「無理するんじゃないぞ、鈴々」
「ふっ、心配か? 愛紗」
「当たり前だろう、星? 万が一、手が滑ったらどうするのだ」
「やれやれ。少しは鈴々を信用してやってはどうだ?」
「フン、私の勝手だ」
とは言え、器用なものだ。
あっという間に、頂点近くに達してしまったようだ。
「見えたのだ! 黄巾党の旗以外に、『楊』と『韓』の牙門旗があるのだ!」
鈴々の声が、頭上から響いてきた。
「楊奉と韓暹でしょう。間違いなく、白波賊ですね」
「後は数ですねー」
「どうだ、鈴々? 数はわかるか?」
愛紗が大声で問いかけると、
「とにかく、一杯なのだ!」
「一杯ではわからんぞ!」
「うー、でもたくさんなのだ。鈴々達と、同じぐらいに見えるのだ」
その言葉に、皆の顔が強張る。
「間違いないのだな、鈴々?」
「きっと、そうなのだ!」
「わかった。鈴々、下りて参れ」
「了解なのだ!」
集めた情報を持ち、董卓の許へ向かった。
「斥候の報告でも、白波賊の数は凡そ三万との事です」
董卓の言葉で、軍議が始まる。
「張飛の見た数とほぼ一致、ちゅう事やな」
「うむ。二万と踏んでいた賊軍が三万とは。いかに私の武を以てしても、この差は厳しいな」
「……親父。どうする?」
「ううむ……」
もともとが、数の優位を活かした作戦を立てていたのだが、その前提が崩れてしまった。
「黄巾党は、日々膨れ上がっている、とは聞いていたけど……。まさか、この短期間に一万も増えるなんて」
賈駆が、頭を抱える。
「数はこれで互角、という事になりますが」
「問題は、兵の練度ですねー。相手が賊軍という事を割り引いても、こちらの被害も少なくはないかと」
まさに、問題はそこであった。
兵というものは、数を集めればそれで済むというものではない。
ましてや、短期間とは言え、名だたる将達が鍛えた兵だ。
仮に勝てたとしても、こちらの被害が大きくて何の意味もない。
勿論、董卓軍や丁原軍の被害も、少なければ少ないほどいい。
「……土方さん。お願いがあります」
「何でござるかな、董卓殿?」
「はい」
董卓は、真剣な眼差しで、私を
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