第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十 〜激突〜
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翌朝。
華雄は早々とやって来て、歩兵の調練を始めている。
熱の入りように、兵らも顔を引き締め従っているようだ。
それを横目に、稟らを天幕へと呼んだ。
「鈴々。済まぬが、先に行って始めてくれぬか?」
「にゃ? 愛紗や星はどうするのだ?」
「後から行かせる。少し、話があるのだ」
「わかったのだ」
素直に頷くと、鈴々は飛び出していった。
……流石に、鈴々の前では話せる事ではあるまい。
「さて、主。一体何事ですかな?」
「うむ。薄々感づいているやも知れぬが。ここにいる皆が、私と繋がりを持つ事と相成った」
「……ご主人様。ま、まさか……」
みるみる、愛紗が真っ赤になる。
「そのまさか、ですよ。愛紗ちゃん」
「……昨夜、歳三様に想いを打ち明けました。そして、受け入れていただいたのです」
風と稟も、顔を赤らめる。
「愛紗。私を、気の多い男……と思うか?」
「……正直、複雑な思いはあります。ですが、ご主人様から、そ、その……」
「抱いた、という訳ではありますまい? あの夜、私に囁いて下された事が真ならば……ですが」
そう言って、息を吐く星。
「虚言を弄するつもりはない。お前達皆が大切だ、今もそう思っている」
「しかし、何故それを我らに仰るのです? ご主人様が一時の気まぐれでない、そう断言されるのであれば」
「これは、私なりのけじめ、と思って貰いたいのだ。ただ、女子にだらしのない輩と思われては不本意なのでな」
私の言葉に、皆がはっきりと、頷いてくれた。
「歳三様。鈴々は、どうなされるおつもりなのですか?」
「稟。それは、お前達と同じように、という意味か?」
「そうです。……あの娘は、まだ子供。本人は否定するでしょうが、睦事には早い、と」
「もっとも、お兄さんが望むのなら、止めようがありませんけどねー」
「うむ。私も、それは避けるべき、と思う。鈴々が今暫く成長した後、奴自らが私を想ってくれるのであれば、その時に考えるべきであろう」
「……そうですね。私は、ご主人様の意見に賛成です」
「競争相手をこれ以上増やしたくないか、愛紗?」
「せ、星! 私はただ、鈴々の事を心配してだな」
「星、愛紗をからかうのは止せ。鈴々は、愛紗にとっては妹のようなもの、そうだな?」
「……はい。身体もですが、精神的にもまだまだ幼いところがあります。そのような様で、睦事は正直どうかと」
「心配せずとも良い。私も、そこまで分別なく、というつもりはない。……皆、良いな?」
「御意!」
「はっ!」
「承知しました」
「御意ですよー」
これで良い。
一人一人気遣えぬようで、人の上に立つ資格などあろう筈がないからな。
愛紗と稟はともかく
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