第五章
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余計にだ、誰もが働いた。
「要領の悪い人達だけれど」
「出来ない人達だけれど」
「あれだけやっているんだ」
「被災者の人達の為に」
「それなら俺達もな」
「ちゃんとしないとな」
こう言うのだった、それぞれ。
「そしてな」
「あの人達を助けよう」
「被災者の人達を」
「あの人達をな」
頷き合ってだった、彼等も勇んで働いた。そうして。
被災者達の人達に物資を届けた時にだった、避難所である学校の体育館にいる被災者の人達が二人に言った。
「本当にすいません」
「助かります」
「こうまでしてくれて」
「こんなに食べものやお水を持って来てくれて」
「毛布や使い捨てカイロまで」
「本当に有り難うございます」
「いえ、当然のことです」
矢田がだ、被災者の人達に微笑んで答えた。汚れたままの迷彩服姿で。
「私達は自衛官ですから」
「こうしたことをしてくれることが」
「当然ですか」
「はい、国民の皆さんを守ることが仕事ですから」
だからだというのだ。
「当然のことをしているだけです」
「そうなのですね」
「そう言われるのですね」
「そうです」
こう言うだけだった、そして。
矢田は自分の左にいる森下に顔を向けて尋ねた。
「他に何か届けるものは」
「これで全てです」
森下は矢田にすぐに答えた。
「水も毛布もお渡ししました」
「了解、それでなのですが」
森下に応えてからだった、矢田は被災者の人達に顔を向けて尋ねた。
「まだ足りないものがあれば何でも仰って下さい」
「何でもですか」
「はい、可能な限りすぐに送らせて頂きますので」
「そうなのですか」
「そうさせて頂きます」
敬礼と共に言うのだった、そして実際にだ。
彼は被災者の人達の要望を聞いて自ら上層部に連絡してだ、被災地にいる被災者の人達に物資を届けさせた。時には自らトラックを運転して。
森下もそうした、その二人を見てだった。
もう誰も二人を悪く言う者はいなかった、それこそ一人として。
「凄いな」
「ああ、お二人共な」
「あの人達ならな」
「やってくれるな」
「確かにどん臭くて要領が悪くて」
「仕事は出来ないけれどな」
それでもというのだ、二人は。
「やる時はやってくれる」
「それも全力でな」
「自分の為じゃなくて困っている人達の為に」
「そうした人達だよ」
「凄い人達だよ」
こう言って認めた、そしてそれは部下達だけでなく。
上層部もだ、二人を見て言った。
「ああした人間こそ必要だ」
「本当にな」
「自衛隊には欠かせない」
「華々しさはなくても」
所謂颯爽と完璧に仕事をするタイプではない、しかしというのだ。
「ああして地道に必死に働いてくれる」
「自衛官としてあるべ
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