第五章
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「ワインとか焼酎とか」
「そういうのの方が」
「女房も家でそれならもう焼酎かワインにしろと」
「奥さんもですか」
「そう言いますか」
「しかもうちの課長が痛風持ちで」
宮田の直接の上司である彼がというのだ。
「絶対にならない様にって言ってます」
「あれ相当痛いらしいですからね」
「もう足の親指の付け根が万力で締められるみたいだとか」
「泣きそうな痛さとか」
「そう言われてますね」
「はい、ですから」
それでというのだった。
「私もそろそろ」
「ビールを止めて」
「焼酎かですね」
「ワインですね」
「そっち飲みましょうか、ですが」
それでもとだ、宮田はこうも言った。
「ビール美味しいですよね」
「焼き鳥はこれですよ」
「お好み焼きや焼きそばにも」
「ビールが一番ですね」
「何といっても」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「ビールがいいんですがね」
「けれどですね」
「痛風は怖いですからね」
「だからですね」
「ビールは」
「残念ですが」
実際にだ、宮田は無念の顔で言った。
「ビールはです」
「止めて」
「そしてですね」
「焼酎やワイン」
「そうしたものですね」
「それで飲んでいくしかないです」
痛風が怖くてというのだ。
「これからは」
「何かそろそろです」
「そうした話を聞きますね」
「若い頃はそうでもなかったのに」
「近頃は」
「仕事も家庭も」
宮田はこうしたことの話もした。
「何とかですね」
「そうそう、景気が悪くて」
「女房も子供も」
「何かと苦労しますね」
「愚痴が尽きませんね」
「本当にです」
また言った宮田だった。
「最近難しいですね」
「ヒーローをやっていても」
「家にすぐに帰らないといけないですし」
「帰りが遅いと女房が怒りますしね」
「それもすぐに」
「はい、ですから」
それでとだ、宮田は焼酎を飲みながら話した。彼はもう飲む酒を早速ビールから切り替えてしまっていた。
「ヒーローをしてもですね」
「時間がないですね」
「全く、身体のことも仕事のことも家庭も」
「何かと大変で」
こうしたことを話してだった、そのうえで。
彼等は酒と焼き鳥を楽しみながらも愚痴を言って憂さを晴らしていた、その飲み会の後で。
宮田は家に帰って女房の太っただのお金がないだの息子のことだのを聞いてだ。風呂に入って晩飯を食べてからだった。
ベッドの中に入った、すると。
彼をヒーローにした神にだ、夢の中で言われた。
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