第二章
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「裸の絵です」
「ボッティチェリのヴィーナスの誕生だな」
「やっぱり凄い絵ですね、ただ」
「ただ?」
「いや、こんな奇麗な人いるんですかね」
実際にとだ、僕は先輩に尋ねた。
「こんなヴィーナスみたいな人」
「いるだろ、イタリアには」
「いますか」
「こんな感じのな、ただな」
「ただ?」
「美化はされてるだろ」
こうも言ったのだった。
「フィルターかかってな」
「美化ですか」
「まあそれでもな」
「こんな奇麗な人いますか」
「いるだろ、ただな」
「ただ?」
「御前この絵の美人みたいな人がいいのか?」
先輩は僕に結構真面目に聞いてきた。
「そうなのか?」
「いや、顔滅茶苦茶奇麗ですよ」
「顔はいいさ、けれどな」
「けれどっていいますと」
「身体見ろよ」
こう言ってだ、先輩は。
図鑑に載っているボッティチェリの他の絵もだ。僕に見せてくれた。その絵を見せてそうしてそのうえでだった。
あらためてだ、こう僕に問うてきた。
「どの裸もな」
「あれっ、そう言えば」
言われてだ、僕も気付いた。
「何か太ってますね」
「そうだろ、腹が出てな」
「しかもお尻とか足とか」
よく見るとだ、実際に。
「太ってて」
「結構スタイル悪いだよ」
「ヴィーナスって言っても何か」
「先生に聞いたらな」
先輩は僕に結構真面目な顔で話した。
「昔はこれがスタイルいいってな」
「思わえてたんですか」
「いや、実際にそうだったんだよ」
「太ってる女の人が好かれてたんですね」
「そうなんだよ、こういうのって時代によって変わるんだよ」
先輩は僕にこのことはかなり真面目に話してくれた。
「だから平安美人とかな」
「あのおかめっていうか」
「下ふくれだろ」
「はい、あれがですね」
「美人って言われてたんだよ」
「そうなんですね」
「そうだ、だからな」
それでというのだ。
「この時代のヴィーナスはこうなんだよ」
「成程、そうですか」
「それでな」
先輩は僕にさらに話してくれた。
「俺この前な」
「この前?」
「ちょっと同級生、バスケ部の娘に言ってみたんだよ」
先輩は今度は笑いつつ僕に話した。
「モデルになってくれないかってな」
「ひょっとして」
「ああ、この絵のな」
そのヴィーナスの誕生を指差しての言葉だ。
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