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鎮守府の床屋
前編
3.賑やかな人たち
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り半分の髭も剃り終わった後は、シャンプー台でシャンプーすることにする。

「提督さ〜ん」
「ん〜?」
「かゆいところはないですか?」
「左の」
「却下です」
「なぜッ?!」
「どうせ提督さんも足の裏がかゆいとか言うんでしょ。艦娘のみんな足の裏を俺にかかせようとしたんですから」
「いや、左のこめかみあたりがかゆいって言おうとしたんだけど……ずーん……」
「し、失礼しました……」

 そして提督さんはこの鎮守府では数少ない常識人なようだ。少なくとも、シャンプー中に『かゆいところはないですか』と聞かれ、足の裏と答えない程度には常識をわきまえた人のようで安心だ。

 シャンプーも終わり髪を乾かしたあとは、ビス子の時と同じく両肩をぽんと叩いてあげる。『これで終わり!』という信号を身体に送ってあげる、優しいインパクトだ。

「はい! おしまいです!」
「ほっ!」

 提督さんはスッキリした自身の髪型を鏡で確認し、十字に切り込みを入れて炭火で焼いたしいたけのように目を輝かせ、おれの方を向いた。

「ハル! ありがとう! めっちゃスッキリした!!」
「いえいえ。これがおれの仕事ですから」
「心持ち、男子力が上がった気がするよ!!」
「そいつはよかったです。提督さん以外はみんな女の子ですからね。男子力は大切です」
「いやぁあよかった! ハルが来てくれてホントによかった!!」

 よほどうれしかったのか感激したのか、提督さんは年不相応におれの手を取ってブンブンと上下に振っていた。正直大げさ過ぎないかとも思ったが……

「いやぁホントにありがとう!」

 この人のこの表情がウソや社交辞令とはどうしても思えない。ホントにうれしい人が見せる反応だ。艦娘たちだけじゃない。この人もずっと待ちわびてたんだなぁ。

「ああそうだ。今哨戒任務についてる球磨たちなんだが」
「ほい」
「ここに来る前に通信があった。とりあえず帰路に着いたそうだ。夕方頃には戻ってこれるだろう」
「そうですか。よかった」

 唐突な球磨の安否報告は何なんだろう? 確かに艦娘の中では仲はいい方かもしれんけど、昨日初めて会った間柄ですよ?

「あーいや、午前中に球磨の話をちょこっとしたろ?」
「しましたね」
「その時のハルの様子が少しおかしかったからな。心配してるのかなーと」

 この人するどいな……だてにこの鎮守府のトップに立っているわけではないようだ。戦力は乏しいけれど。

「まぁ大丈夫だあの子たちなら。無事返ってくるよ」
「了解っす。提督さん、ありがとう」
「いや、彼女たちと仲良くしてくれるのは、俺も大歓迎だしな」

 その後、スッキリさっぱりして気を良くした提督さんは、スキップを踏みながらバーバーちょもらんまを後にし
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