第二十四話:対決・紅の姫騎士(上)
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といつも通りの軽さを演じていたのか。
……何れにせよ、彼等は俺達の事を本気で心配しているからこそ、そういった行動をとったのだろう。
「流石に連絡もしていたし、バレるかもしれないからって朝にはあたしだけ戻って来たけどね?」
「……親父は、不眠不休で続ける気なのか?」
「ええ。しかもアンタ達が帰ってくるまで、ずーっと続ける気でしょうね……あの人の事だから、倒れるまで祈り続けるわよ」
「……」
「必ず勝って、みんなで帰ってきてね麟斗。じゃなきゃお母さん、許さないから」
「…………ああ、勿論だ」
……何時もなら、不信と不快しか感じない事が多い親だ。
だが……たまに魅せる本気の愛が、以前より平坦な時流れる冷たい家庭に居た俺にとっては、何よりも暖かく心地よい物なのもまた事実。
コレがあるから……この“普通”でありながら“普通ではない”優しさがあるから……例えどれだけぞんざいに理不尽を着せられようとも、まだ心の片隅では最後の最後まで彼等を嫌いになり切れないのだろうか。
それでも彼らの過去の所業や普段の行いを無き物にはできない。何せ、与えられた心労はその実、俺の髪の毛が灰色になる程のものだったからな。
……しかし同時にそれを引きずり、唐突に煩わしさを思い出すあたり―――空気の読めない奴かもしれないがな、俺は。
「……優子。ロザリンドには《婚約者》が居ないけれど、私には居る……麟斗がいる。……だから大丈夫。勝って戻ってくる」
「責任重大ね、麟斗? じゃあ私も……勝利して帰ってくる事を信じて、夜は御馳走を用意しておくわね」
「寿司でも頼む気か?」
「鍋よ。みんなでつつくならソレが良いでしょ」
「……このクソ熱い中で鍋か……?」
「……私は、何でも構わない。……美味しいなら、もっといい」
いつも通りの食いしん坊ぶりを発揮した後、マリスは唐突に俯いてされどすぐに顔を上げ、無表情なれど何処か《決意》の籠った顔で言葉を発した。
「……約束する。今夜は皆で、鍋をつつく。私も、楓子も、京平も、優子も―――麟斗も一緒に」
ふと俺の脳裏に、とある光景が伝来した。
楓子がまた五月蠅く大はしゃぎし、親父がそれを窘めお袋はフォローに入り、俺はひと時の団欒を崩さぬように本音は言わずに黙々と食べ、マリスがまた食べ過ぎてみんなに苦笑される。
各人それぞれ主張や性格がハッキリしているからこそ、瞼の裏にその光景はアリアリと浮かぶ。
やっぱり奇妙としか思えないし、結局どれだけ温かであろうとも俺の味覚は何も変わりゃあしないが……それはそれで有りかもしれないとは思う。
何よりそれ事態を抜き出すなら、アイデアとしてかなり優秀なものだろう。
―――暖かさと、食
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