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八神家の養父切嗣
二十六話:道標
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なのはは笑顔を崩すことなく頷く。ティアナの焦りはもっともだ。センターバックというポジションの特性上、直接的な身体能力や反応速度、魔力運用が上がっても自分で実感できる上達にはならないのだ。勿論、外から見ているものからすれば以前との違いははっきりと感じることができるのだが自分自身となるとそうもいかない。彼女がこうした悩みを抱くのはある意味で当然の帰結なのだろう。

「じゃあ、ティアナに質問ね」
「え? は、はい」
「ティアナが早く強くなるには何をしたらいいと思う?」

 今度は逆になのはに尋ねられて面を食らうティアナ。何をすれば強くなれるのか。今までとにかく強くなりたいと思って訓練を行ってきたが、訓練の過酷さもあり自分で考えるということをやめていた。そのことに改めて気づき、彼女は答えを出すために頭をフル回転させる。

 どうすれば早く強くなれるのか。それを達成するためにまず必要となってくることはどういった強さを目指すかが重要だ。一人で何でもこなせるオールラウンダーを目指すのか。一点特化の職人のような力を目指すのか。それだけで方向性は大きく変わってくる。改めて自身が目指ししているものを考える。彼女は兄の夢を叶えるために執務官を目指している。つまり執務官に必要な能力を考えればいい。

 執務官は部隊を率いて事件に取り組むこともあれば、単独で潜伏任務を行うこともある。要するにある程度のことはこなせるようにならなければならない。そうなってくると目指すのはオールラウンダーに近い魔導士だ。オールラウンダーはその名の通り全てがこなせなければならない。その時に第一に必要になってくるのが基礎だ。どっしりとした土台を作りその上に全てを積み上げていく。結局のところなのはの言うように基礎を鍛えなければ話にならない。

 自分に改めて理解させるためにわざと考えさせたのかと恐る恐る目を向けてみるが、なのはは相も変わらぬ笑顔だった。そこから彼女は別の答えを求めているのだと察して再び考え始める。基礎以外で強くなる方法。オールラウンダーとして完成する道筋。それは―――

「欠点の克服、もしくはそれを補う何かを見つけることだと思います」
「うん、その考えでいいよ。じゃあ次はティアナ自身の欠点は何かな?」
「……色々とあり過ぎてどれから言えばいいか」
「それじゃあ、ティアナが今一番足りないなぁって思ってることを言ってみようか」

 自己評価の低いティアナは欠点と言われていくつも思い浮かべてしまう。そんな様子にかつての自分もこんな感じだったなと思い出しながらなのはは諭す。欠点を無くすと言えば聞こえはいいが正確に欠点を把握していなければ意味がなくなるどころか悪影響になりかねない。変える必要のない場所を無理に変えておかしくなった人間は数え切れないほどいるのだから。

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