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渦巻く滄海 紅き空 【上】
百  ナルト死す
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嵐だった。

濃淡の灰色に満ちた空。途切れる事の無い雲の一群が、不気味に静まり返った地上に影を落とす。
稲妻に彩られ、暗澹たる空がカッと蒼く光った。

「―――ッッ、」
激しく降りしきる雨の中、誰かの叫び声が何重にも轟く。
雷鳴に掻き消されたその声は何れも必死さを帯びていた。


横殴りの風雨に晒された荒野。
雷光が、不連続に連なる岩肌、立ち並ぶ柱石、焼け爛れた岩々……そして、一人の少年を照らし出す。

「ナルト、しっかりしやがれッ」
「いやぁダーリン死なないでっ」
その少年の傍らで、赤き髪の少女らが嘆く。

再び閃いた青光の中で、伏せた少年の姿がぼんやり浮かび上がった。
蒼い光を帯びた金の髪が心許無く揺れている。

交互に名を呼び続けていた少女らが、横から吹きつける突風にハッと揃って顔を上げた。
風の発生源と戦闘中の仲間へ眼をやる。未だに現実が信じられない他の面々が黙々と攻撃を仕掛ける中、一番経験豊富な再不斬でさえも、この状況に戸惑いを隠せないようだった。

悪戦苦闘する彼らの劣勢に唇を噛み締め、多由也と香燐は倒れ伏す少年を気遣わしげに見つめる。
頼みの綱は、彼女達の想い人、ただ一人だけ。


「――おいッ?」
首切り包丁を振り翳しながら強風に負けじと再不斬が声を張り上げる。凄まじい勢いで迫り来るソレの攻撃を辛うじて避け、彼は叫んだ。
「まだ眼を覚まさないのか…ッ?」

常に無い焦りを帯びた声音。
力無く頭を振る少女達の所作を眼にし、苛立たしげに舌打ちした再不斬は、反射的に地を蹴った。
寸前まで己がいた場所に深く突き刺さる触手のようなモノ。
その触手の先端はまるで鋭利な刃物の如く尖っており、刺されば致命傷は避けられない。

再び耳元を掠めゆく幾本もの触手に、再不斬は顔を顰めた。
倒れ伏せたまま動かぬ少年を目の端に捉え、彼の眉間の皺が益々に深くなる。
(俺との賭けをふいにする気か――――ナルトっ??)

ブォンッ、と唸り声を上げる首切り包丁がむなしく空を切った。









何の予兆も、前触れも無かった。

あの、底知れない力を秘めた少年が。会う者全てに、言い知れぬ畏怖を否応なく抱かせる彼が。
圧倒的な強さと威圧感を背負い、遥か高みに座しているかのような存在が。

うずまきナルトが。
急に、目の前で…――――。


動揺する暇も無く、どんよりと曇り出す空。急に悪天候になった天の下、不穏な空気が流れてくる。立ち込める雷雲と共に、突然の豪雨が地上へ降り注ぐ。

愕然と立ち尽くす彼らの前で、現実は容赦なく動き始めた。


ナルトを中心に、ナニカが渦を巻いていた。
巨大でおぞましいソレは周囲の岩々を手当たり次第に破壊し尽くすと、その
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