百 ナルト死す
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の傍にいたはずの存在が、何時の間にか、零尾の上にいる。
寸前まで微動だにしなかった彼は、まるで救世主のように、黒の両翼を広げる零尾を見下ろしていた。
月を背にしたその姿は金色の光をその身に浴びて、静かに零尾を見下ろしている。月光が彼の容姿の輪郭をなぞり、美しく映えていた。
ひらひらと舞う漆黒の羽の中、静かに口を開く。
「黎明」
名を呼ばれた途端、あれだけ暴走していた零尾の巨躯がビクリと打ち震える。今まで暴れていたのが嘘のように、大人しくなった零尾がナルトの顔色をおそるおそる窺った。
あれだけ暴走していた化け物を、名を呼んだだけで鎮めたのだ。その事実に、地上で見上げていた者達が愕然とする。
急に静かになった零尾が両翼を大きく広げた。ゆっくりと下降し、地上へ近づくにつれ、零尾の巨躯が徐々に霞んでゆく。
とん、と軽やかな音を立て、ナルトが地へ降り立った時には、零尾の巨大な姿は何処にも無かった。
しかしながら、ナルトの全身を取り囲むように舞う漆黒の羽根が、零尾という化け物が確かにいたという現実を露わにしていた。
ナルトの無事な姿を見てほっと安堵した多由也達は、すぐさま彼の許へ駆け寄る。
だが次の瞬間には、ナルトの身体は糸が切れたかのように再び倒れ伏せていた。
暗澹たる曇天が、やがて、晴れてゆき、雷雨も何時の間にか止んでいる。零尾が暴走していた間中ずっと澱んでいた空気が、緩やかに清浄なものへ戻ってゆく。
雲間より射し込む月の澄んだ光が、ナルトの全身をやわらかく包み込んでいた。
不意に、目が覚めた。
「……いまのは……」
雪白の長い髪を掻き上げ、彼女はぽつり、呟いた。
額から滴る汗が寝床に幾つもの染みを作っている。身を起こすと、彼女は己の身体が震えている事にようやく気づいた。
「…いまのは…なに―――」
急に解き放たれた白昼夢。
夢の中で見た金色の髪の少年に、彼女は思いを馳せた。見ず知らずの少年だというのに、彼の姿が瞼の裏に浮かぶたびに、手が震える。
今まで幾つもの【予知】を視てきたはずなのに、これほどの衝撃を彼女は受けた事が無かった。
同時に、あれほど鮮やかで強烈な映像を視たのは初めてだった。
彼女は胸元に差してある鈴を見つめた。硝子で出来た鈴は滑らかな円を描き、美しい光沢を放っている。その光にようやっと心を静めると、彼女は寝床の薄物を掻き抱いた。
眼を閉ざす。先ほど視た【予知】が瞼の裏を静かになぞってゆく。
声を殺して泣く彼女の白い髪が夢を辿るように広がった。
金色の髪の少年。彼の避けようも無い絶望を目の当たり
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