百 ナルト死す
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巨躯をやにわに縮ませる。不穏な空気に相俟って、つつ闇が果て無く広がってゆく。
その間、彼の名は周りの人間達にずっと呼び続けられたが、ナルトの身体は微塵も動かなかった。
生きているのか、それとも…――――。
目の前の現実が、全てが、俄かには信じられない。
周囲の狼狽をよそに、ナルトの身体から現れたソレ。
白い繭のように丸まったソレの背中がややあってボコリと音を立てる。裂かれた罅の割れ目から、黒々としたモノを生やしてソレは―――零尾は大きな影を地上に落とした。
「…は、ね……?」
ナルトの傍らで、香燐が呆然と唇を震わせる。見覚えのある顔が曇天の下で異様に白く浮かんでいた。
額に『零』という字が施された生白いお面。しゃらりと揺れる五本の飾り紐に、眦と唇に引かれた紅が白面上一際目立つ。顔面に施された両眼は眼と言っても窪みすらない糸目だ。
笑っているのか怒っているのか泣いているのか。判然とせぬ面相。
『零尾』――世に戦乱が溢れ、人の心に闇が蔓延りし時、復活する。心の闇を喰らい生まれ、無限に成長する闇の権化……かつて神農に無理矢理従わされていた尾獣。
神農の支配から逃れた零尾は、ナルトの身に封じられたようだった。他でもないナルトが自らの身体を器として提供したのである。
よって、ナルトに『黎明』という名を与えられた零尾は彼の中で大人しくしていた、はず、だった。
それがどうして今、このような事態に陥っているのか。
(暴走か!?今頃になって、何故…っ)
一度零尾と対面したからこそ、わかる。特にチャクラを感知出来る香燐は零尾の異常なチャクラに戦慄を覚えていた。
以前でさえ、厄介な存在だったのだ。それが翼を生やすだなんて、もう何処にも逃げ場など無い。天地全てが零尾という化け物の領域内になってしまったのだから。
絶望感に襲われる香燐の前で、零尾は悠然と己の黒い翼をはためかせる。漆黒の羽根がひらひらと無数に飛び交った。
(こっちの考えを読み取るとか、そんな馬鹿な…ッ)
一方、香燐と共にナルトの傍にいつつも、笛で操った怒鬼で攻撃していた多由也が零尾を苦々しげに見据えた。零尾との力の差を思い知らされ、歯噛みする。
遠距離戦を得意とする多由也だが、だからこそ、彼女は観察眼が鋭い。故に、まるでこちらの動きを読んでいるかのような零尾の行動に、多由也は驚愕を隠せなかった。
怒り・憎しみ・恐怖…といった心の負を糧とする尾獣。どちらかというとサトリの一種に近い。
ちょっとでも不安の種があれば、それを敏感に感じ取り、心を見透かす。
尾を持たぬ尾獣とは言え、確実に人の手には余る代物だ。
ソレを人柱力でも無いのに、抑え込んでいたナルトの力量こそ目を見張るものがある。
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