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イエ
第三章

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「観光で派手にやるらしいな」
「お祭りを?」
「ああ、ここでな」
 そのブカレストでというのだ。
「そうらしいな」
「また吸血鬼?」
 眉を顰めさせてだ、エレナは言った。
「観光っていうと」
「もう沢山だな」
「どうせドラキュラ伯爵とかね」
「ブラド四世とかな」
「そうしたお祭りよね」
「串刺しとか出すんだろうな」
 ブラド四世の代名詞だ、権勢を持つ貴族や敵軍の捕虜を容赦なくそうしていき激痛の中でじっくりと死に追いやっていった。
「そうした人形とかな」
「串刺し祭りね」
「インパクトはあるな」
 ゲオルゲが見てもだ。
「かなりな」
「まあそれはあるね」
「けれどな」
「正直悪趣味ね」
「血生臭いな」
「ハロウィン以上にね」
 アメリカ等で楽しまれている、だ。
「そうしたお祭りね」
「それでまたな、我が国がだ」
「吸血鬼のイメージが定着するのね」
「そうした国になるな」
「いい話じゃないわね」
「観光客が増えるのはいいにしても」
「やっぱり吸血鬼じゃない」
 エレナは眉を顰めさせて夫に言った。
「そこから離れられないのね」
「吸血鬼は何処にも話があるがな」
「東欧全体にね」
 もっと言えば世界中にある、吸血鬼の話がない国は存在しないと言っていい。それこそ洋の東西大陸を問わず存在している。
「ハンガリーにもブルガリアにも」
「セルビアとかにもな」
「それでもルーマニアばかり言われる」
「どうにかならないのか」
 観光の題材になっていても本当にそればかりでうんざりしている言葉だった、それで二人もこの祭りもまた吸血鬼かと思っていた。
 しかしだ、首都で行われているそのリハーサルを見てだ、二人は驚いて言った。
「ああ、これはな」
「いいわね」
「そうだな」
 二人で言うのだった。
「まさかこうくるなんてな」
「政府も考えたわね」
「ひょっとしたらな」
「ひょっとするわね」
「新境地だな」
「ルーマニアの観光のね」
「それがなるかもな」
「うちのお店もお客さんに吸血鬼吸血鬼って聞かれることが減るわね」
 エレナはこのことに期待を見せていた。
「これは」
「そうなるかもな」
「いいことよ」
「本当にな」
「これならね」
「観光客もな」
「ええ、我が国の別の一面を知って興味を持ってね」
「そっちも目当てにしてくれるぞ」
 二人で期待を見せていた、二人だけでなくそのリハーサルを見た他の市民達も期待で目を光らせていた。
「政府もたまには面白いことするな」
「もう欧州中に宣伝してるらしいしな」
「観光も産業だ」
「吸血鬼だけが産業じゃ駄目だ」
「というか外国人皆吸血鬼だからな」
 ルーマニアといえば、というのだ。
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