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101番目の舶ィ語
第五話。異界の迷い家
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っている気がする。
ただ、あの時は気にもしていなかったが……。

「そう言えばさ、鳴央ちゃん」

「はい?」

自分の足の上に俺の頭を乗せた鳴央ちゃんは、そのまま俺の髪をやんわりと撫で続けてくれた。ああ、気持ちいい。このまま寝てしまいたくなるが、ここは既に夢の中。

「あ、いや。気分を悪くしたらあれなんだけど。あの日。前にもこうやってくれた時も。あれって、ええと、あ、その……」

尋ねてから、しまったと思った。
他の人にもしたのか、なんて。聞いてどうする?
それに彼女は自分が犯した過ちを悔いているのに、あの出来事を思い出させてどうする気だ?
死んだ人にも膝枕をしたのか、なんて……言えるわけないだろ!
やっちまったな。
一人後悔していると。

「ふふっ、大丈夫ですよ」

「う、うん?」

俺の葛藤とは裏腹に。
彼女は静かな口調のまま話りかけてくる。

「ちゃんと向き合うって決めているから、神隠ししてしまった人達のことを尋ねられても頑張りますし。それに、膝枕をしたり、抱きついたりしたのは、疾風さんだけです」

どっちの意味でも大丈夫、だったのか。
それを聞いて安心してしまう俺も俺だけどな。
だが、それはそれで疑問が浮かぶ。

「どうしてだい? あの時は別に……俺はただの被害者の一人だったのに」

「どうしてでしょうね。なんとなくです。貴方に、ああやって優しくしたいと思ったのは、もしかしたら、貴方を消すことをとても内心では嫌がっていて。だから、せめてとても楽しく過ごして欲しい。そんな気持ちだったのかもしれません」

当時のことを語る鳴央ちゃんのはやっぱり寂しそうな目をしていた。

「そっか。なら、嬉しいなあ」

「ふふっ、嬉しいなら何よりですよ」

ニコニコと楽しそうに俺の髪を指で弄る鳴央ちゃん。
最近は戦い続きでのんびりなんて出来なかったから、こんなのんびりした時間がいつまでも続けばいいな、と思ってしまうくらいには、俺は彼女と過ごすこの空間で寛いでいた。
だが、寛いでばかりではいられないのだ。
こうやって落ち着いた気持ちになれたからこそ、ちゃんと冷静に考えないといけない。

「ありがとう、君のおかげで冷静に考えることが出来たよ」

「妹さんのこと、ですか?」

「ああ。理亜が俺より有能な『主人公』なのは間違いない。けど、それでも俺は彼女にはそういう______責任っていうのかな。覚悟もだけど。そういうものを感じさせたままでいさせるのはやっぱり嫌なんだ」

「うん、疾風さんならそういうだろうなあ、と思っていました」

なんだ。やっぱり解ったのか。解りやすかったかな?
感謝の意味を込めて。
俺が鳴央ちゃんの片手を、その指を絡めるように握ると彼女もぎゅっと
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