第十七話 アントワッペン騒乱
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ランドール伯は、重鎮たちに話を振った。
「マクシミリアン王子を手中に収めておけば、トリステインは手出しは出来まい。そうやって時間稼ぎをして、ガリアからの援軍を待てば、悠々と独立が出来ましょう」
「ガリアへの使者は誰を使わせたのか?」
「我々の手先の中から選りすぐりの者を送りました」
重鎮は自信満々に言う。
彼らはアントワッペン市を、一種の自由都市として独立させる事が目的だった。
しかし、ド・フランドール伯は、この陰謀が上手く行くとは思っていなかった。
大国ガリアが約束を守るとは思えなかったからだ。
(ガリアが援軍を寄越すとは思えないし、たとえ、寄越したとしても、そのまま居座って、独立を許さないかもしれない)
様々なしがらみに縛られ、未来に絶望し引く事も出来なくなったド・フランドール伯は、事ここに至り……
(滅ぶのならば、いっその事……)
弱気になった心を黒い感情で塗りつぶす。
(王子を巻き込み、コイツ等を巻き込み……盛大に滅んでやろう!)
ついに、滅びの美学とは違う、何か別の境地に行き着き、ド・フランドール伯は黒い笑みを浮かべた。
☆ ☆ ☆
……夜が明けた。
アントワッペン市内にある、マダム・ド・ブランの工場では、朝早くから羊毛を積んだ馬車が引っ切り無しに行き来していた。
「皆さん、おはよう。今日は王子様が工場見学にお越しになる予定よ、普段道理で良いって仰っているみたいだけど、みんな粗相のないようにね?」
そう発言したのは、マダム・ド・ブランの元締め、ド・ブラン夫人だ。
彼女、ド・ブラン夫人の一度聞いたら忘れられない声が朝礼中の室内に響いた。
もし、マクシミリアンがこの特徴のある声を聞いたら。
『先代の猫型ロボットみたいだ』
と、評しただろう。
声だけでは無い。
ド・ブラン夫人は容姿も異形だった。
歳は四十過ぎだが身長は130サントも満たない、横も広い、そして三頭身だ。
そんな異形の容姿でも、機を見るに敏で、マクシミリアンの改革にいち早く対応して一財産築き上げた。
「……そんな所かしら。それじゃ皆さん、今日も怪我の無いようにね」
朝礼が終わると、従業員たちがそれぞれの仕事場に移った。
従業員の何人かを見ると女性が多く、男女比は半々だ。
これは先の騒動。
アントワッペン中の縫製職人が、大商人アルデベルテの口車に乗って一種のストライキを起こした時の事だ。
ド・ブラン夫人はこの騒動に乗じてミシン機を使い、アントワッペンに於ける縫製事業のシェアの奪う為、行動を
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