34:笑わせないで
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晶に費やしたんだ」
「……そこまで考えてたんだ。すごいね……」
「そして、こっからが本題だ」
俺は手の空瓶を後ろに放り捨てる。それは地面に一度バウンドし、転がって止まる前にポリゴンとなって散った。
「お前の持つ《大鎌》……そのスキルの謎だ。俺はさっき、そのスキルは『HPが回復しているわけじゃない』と言ったな」
「……………」
ユミルは何も言わず、瞼の瞬きだけで俺に返事をした。
「――お前はHPを回復しているんじゃない。……お前はHP最大値を削って、ステータス上昇効果を得ているんだ」
「………………フフッ」
俺の言葉に、ユミルは意図の読めない冷たい笑いを返した。
それにアスナ達は揃って絶句している。
「……他人から見れば、どう見ても回復にしか見えないと思ってたんだけどな。……どうやって気付いたか、教えてもらえる?」
「きっかけは、シリカのレベルアップした瞬間を見た時だった」
俺はチラリと一瞬だけ彼女を見た。麻痺に倒れながらピナを胸に抱き締め、頬を涙を濡らしたまま驚愕の目でユミルを見ていた。
「それを見て俺はHPとその最大値の関係と、死神がスキルを使用した時のHPの回復……いや『変動』の共通点に気付いたんだ。お前はスキルでステータス上昇の恩恵を受ける代償として、HP最大値をデメリットとして支払っている。他人から見ればそれはHPバーの空白部分が埋まっていくわけだから、黙ってさえいればそれは誰もがHP回復だと誤解するだろう」
例えばだ。
仮に、スキル使用前のユミルのHPを【8000/10000】としよう。これで謎のスキルを使い【8000/8000】まで最大値を削れば、バーでしかHP残量を視認出来ない第三者から見れば、あたかも、たちまちに『HPが全回復した』と錯覚させられるわけだ。
……ある意味では、全回復と言っても間違いは無いのだが。
俺の推理に言葉に、ユミルは薄く浮かべた冷たい微笑みをまたごく僅かに深め……
「――《デモンヘイト》」
そう言って大鎌を強く胸にかき抱いた。
「それがこのスキルの名前だよ。HP最大値を削り、それを対価に一時的に筋力と防御力ステータスを大幅に上昇させてくれる、《大鎌》で唯一のスキル……」
デモンヘイト。簡単に意訳すると、その意味は……《悪魔の憎悪》。
「このエクストラスキル《大鎌》は《デモンヘイト》以外のスキルは一切使えないのが玉に瑕だけど……このスキルの面白い所は、『HP値を払えば払うだけ、持続時間の限りいくらでも己を強化できる』っていう所だよ。……こんな風にね」
するとユミルは大鎌を上段に構えた。直後…
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