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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
34:笑わせないで
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 ユミルはその手に持つ幾つかの《それ》をこちらに放った。俺はその中の一つを片手で受け止め、他の幾つかは俺の足元にコロコロと転がった。すると俺の手に持つもの以外のそれらは、すぐにポリゴンとなって散っていった。
 俺の手にあるそれは……中身はカラの薬瓶だった。指先でタップして、詳細を見る。

「《麻痺毒》……」

 しかも、相当に高価な劇薬だった。ユミルは俺の言葉に小さく頷いた。

「アスナ達には、それで大人しくしてもらってる。レベル8の、今手に入る最高の麻痺毒だから、二十分は動けないよ。だから今、長々と話して、毒が切れて仲間達が動けるようになるなんて展開は期待しないほうがいいよ……それまでには、決着が付いてるだろうから。あと……コレもそう」

 そう言ってさらにストレージから取り出したもの。それは……

「《回廊結晶》……!」

 転移結晶よりも色濃い結晶体が、()()()()彼の手に収まっていた。俺がそれを見たと確認したユミルは、余分な結晶を再び仕舞い、一個だけ片手で握り持つ。

 ……これで、俺がアルゲードの酒場で事件の発端を聞いた時と状況は繋がった。

「そうか……これでお前は、自分が仕留めた奴らを《はじまりの町》や《黒鉄宮》の牢獄エリアへと追い出していたんだな」

「その通りだよ……。この大鎌と服はボクの部屋に予め隠しておいたけど……アイテムはストレージに入れたままだった。うっかりしてたよ。キミとの決闘後の事は考えていなかったから。それに……まさか、負けるとは思ってなかったしね」

 くすりとも笑わずに言う。俺は続けて推理の言葉を畳み掛けた。

「さらに言うと、最初にお前と会ったときのボロボロの衣装……本当はそれらのアイテムが原因だったんだな」

 ユミルは微かに感嘆するように「へぇ」と呟いた後、少しだけ首を傾げる。

「……どうしてそう思えたの? キミ達はボクが貧しい理由を、マーブルから聞いてたと思うんだけどな」

「お前が貧乏な理由は、日々の稼ぎを、自分のハルバード《アデュラリア》の代金としてマーブルに払い続けているからだったな。だが俺は、それを聞いてずっと胸に引っかかってたよ。……レベル70を超えるお前の稼ぎで、何ヶ月も払い続けて、まだオーダーメイド武器一つ買えるコルも稼げていなかったのか? ってな」

 ユミルは無言で大鎌をくるりと軸方向に一回転させ、一瞬だけ(もてあそ)んだ。

「……あれは、自分は犯行に必要なアイテムすら買えない、という立場をアピールする為の建前だったんだろう? 本当は、お前は日々の稼ぎの一部を自分の装備や食費にすら費やすことなく、半年以上もの間ひたすら貯蓄し続け、やがて莫大になった額のコルを全て、極めて高価で便利な麻痺毒や回廊結
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